意思能力が無いことを証明するためには「医療記録」を読み解く必要があります。

見慣れない言葉が多用されているため、ポイントを抑えておかないと、その読解には時間が掛かります。

もくじ
  1. 診療記録
  2. (介護保険)認定調査票の主治医意見書
  3. 成年後見登記事項証明書
  4. 後見開始審判申立書の添付書類
  5. 参考文献
  6. 人気の関連ページ

診療記録


認知症治療薬の記載はあるか?

現在、次の4種類のお薬が認知症治療薬として認可されています。

これらのお薬の名前を探すことになります。

 

アルツハイマー病

に使う薬

レヴィー小体型認知症

に使う薬

アリセプトⓇ  〇【1】
レミニールⓇ  
イクセロンパッチⓇ・リバスタッチⓇ【2】  
メアリーⓇ  

【1】現在レヴィー小体型認知症の薬として認められているのはアリセプトⓇのみです。

【2】この2つは会社が違うだけで同じ薬です。

これらの薬の名前を発見した場合、お薬の効能などについては(参照元:「認知症のお薬について」和歌山県立医科大学附属病院・認知症疾患医療センター/211002最終閲覧)などをご参照ください。

長谷川式、MMSE、DASC-21、MoCAなどという文字

これらはいずれも、認知機能検査の名称です。点数によって認知症を見分けることができます。

長谷川式、MMSEの詳細については、こちらのコラム(意思能力とは何か?意思能力が無いことをどう証明するか?)をご参照ください。

  長谷川式(HDS-R) MMSE DASC-21 MoCA
満点 30点 30点 21点【2】 30点
正常 21点以上 28点以上 30点以下 26点以上
軽度認知症の疑い 20点以下【1】 24~27点 31点以上 25点以下
認知症の疑い 23点以下  

【1】長谷川式(HDS-R)は、認知症のスクリーニングを目的に作成されたものであり、得点による重症度分類は行なわない。

【2】4種類の認知機能検査のうち「DASC-21」のみ、点数が高いほど認知症の疑いが高くなります。最少得点が21点、最高得点が84点です。

頭部CT画像データ

脳の萎縮の部位や程度から認知症の種類や程度を推測することができます。

(介護保険)認定調査票の主治医意見書


介護保険が認定された認定情報を取得すると「主治医意見書」が添付されています。

特に注目していただきたいのが次の三欄です。

  • 「1.傷病に関する意見」欄
  • 「3.心身の状態に関する意見」欄
  • 「5.特記すべき事項」欄

重要箇所について、表の後ろにコメントします。

1.傷病に関する意見

以下、主治医意見書作成の手引きから抜粋します。

  現在、罹患している傷病の診断名と、その発症年月日を記入してください。
  発症年月日がはっきりわからない場合は、おおよその発症年月を記入してください。例えば、脳血管障害の再発や併発の場合には、直近の発作(発症)が起きた年月日を記入してください。
  「1.」の傷病名には、65 歳以上の第1号被保険者については、生活機能【1】低下の直接の原因となっている傷病名を、40 歳以上 65 歳未満の第2号被保険者については、介護を必要とさせている生活機能低下等の直接の原因となっている特定疾病名【2】を記入してください。
  生活機能低下を引き起こしている傷病が複数ある場合もまれではありませんが、より主体であると考えられる傷病を優先して記入してください。4種類以上の傷病に罹患している場合については、主な傷病名の記入にとどめ、必要であれば、「5.特記すべき事項」の欄に記入してください。
  【1】生活機能とは、①体・精神の働き、体の部分である「心身機能」、②ADL(日常生活行為)・外出・家事・職業に関する生活行為全般である「活動」、③家庭や社会での役割を果たすことである「参加」、のすべてを含む包括概念。生活機能には健康状態(病気・怪我・ストレスなど)、環境因子(物的環境・人的環境・制度的環境)、個人因子(年齢・性別など)などが様々に影響する。
  【2】特定疾病の診断については、以下に示す「特定疾病の症候・所見のポイント」を参考としつつ、別添3の「特定疾病にかかる診断基準」に従って記入するとともに、診断上の主な所見については「(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容」に記入してください。
3.心身の状態に関する意見
⑴ 日常生活の自立度等について  
・障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)☛□自立 □J1 □J2 □A1 □A2 □B1 □B2 □C1 □C2【1】
・認知症高齢者の日常生活自立度☛□自立 □Ⅰ □Ⅱa □Ⅱb □Ⅲa □Ⅲb □Ⅳ □M【2】
⑵ 認知症の中核症状(認知症以外の疾患で同様の症状を認める場合を含む)【3】
・短期記憶☛□問題なし □問題あり【4】
・日常の意思決定を行うための認知能力☛□自立 □いくらか困難 □見守りが必要 □判断できない【5】
・自分の意思の伝達能力☛□伝えられる □いくらか困難 □具体的要求に限られる □伝えられない【6】
⑶ 認知症の行動・心理症状(BPSD) (該当する項目全てにチェック:認知症以外の疾患で同様の症状を認める場合を含む)【7】

□無 

 

□有 

 

☛□幻視・幻聴 □妄想 □昼夜逆転 □暴言 □暴行 □介護への抵抗 □徘徊 □火の不始末 □不潔行為 □異食行動 □性的問題行動 □その他(          )
⑷ その他の精神・神経症状【8】
□無 □有[症状名:        専門医受診の有無 □有(      )□無]

【1】身体能力が衰えると、車椅子にすら座れなく(座位を保てなく)なります。

ランクCでは外出はほぼ不可能です。

ランクJ

何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する

1.交通機関等を利用して外出する

2.隣近所へなら外出する

り 

ランクA

屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない

1.介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する

2.外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている

ランクB

屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ

1.車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う

2.介助により車いすに移乗する

ランクC

1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する

1.自力で寝返りをうつ

2.自力では寝返りもうたない

【2】Ⅱa、Ⅱbという選択肢はあるが、単に「Ⅱ」という選択肢はない。また、Ⅲa、Ⅲbという選択肢はあるが、単に「Ⅲ」という選択肢はないことに注意。

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準(厚労省/主治医意見書記入の手引き)
ランク 判断基準 見られる症状・行動の例

判断にあたっての留意事項及び

提供されるサービスの例

何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。   在宅生活が基本であり、一人暮らしも可能である。相談、指導等を実施することにより、症状の改善や進行の阻止を図る。
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。   在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難な場合もあるので、日中の居宅サービスを利用することにより、在宅生活の支援と症状の改善及び進行の阻止を図る。
Ⅱa 家庭外で上記Ⅱの状態がみられる。 たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管理等それまでできたことにミスが目立つ等
Ⅱb 家庭内でも上記Ⅱの状態がみられる。 服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応等一人で留守番ができない等
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。  

日常生活に支障を来たすような行動や意思疎通の困難さがランクⅡより重度となり、介護が必要となる状態である。「ときどき」とはどのくらいの頻度を指すかについては、症状・行動の種類等により異なるので一概には決められないが、一時も目を離せない状態ではない。

在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難であるので、夜間の利用も含めた居宅サービスを利用しこれらのサービスを組み合わせることによる在宅での対応を図る。

  
Ⅲa 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声、奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等
Ⅲb 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 ランクⅢaに同じ
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 ランクⅢに同じ

常に目を離すことができない状態である。症状・行動はランクⅢと同じであるが、頻度の違いにより区分される。

家族の介護力等の在宅基盤の強弱により居宅サービスを利用しながら在宅生活を続けるか、または特別養護老人ホーム・老人保健施設等の施設サービスを利用するかを選択する。施設サービスを選択する場合には、施設の特徴を踏まえた選択を行う。

著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。 せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する周辺症状が継続する状態等 ランクⅠ~Ⅳと判定されていた高齢者が、精神病院や認知症専門棟を有する老人保健施設等での治療が必要となったり、重篤な身体疾患が見られ老人病院等での治療が必要となった状態である。専門医療機関を受診するよう勧める必要がある。

【3】申請者に認められる認知症の中核症状の有無について、以下に記載されている判定基準に基づき、該当する□にレ印をつけてください。なお、認知症の中核症状として列挙していますが、その他の疾患で同様の状態が認められる場合も、該当する□にレ印をつけてください(厚労省/主治医意見書記入の手引き)。

【4】例えば、身近にある3つのものを見せて、一旦それをしまい、5分後に聞いてみる等の方法を用いて、申請者及び医師がともに一時的には記憶に残るような直前のことについて覚えているか否かを評価します。記憶に問題がない場合には「□問題なし」に、覚えていないような場合には「□問題あり」にレ印をつけてください(厚労省/主治医意見書記入の手引き)。

【5】申請者の毎日の日課における判断能力を評価します。以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけてください。(厚労省/主治医意見書記入の手引き)

自立 日常生活において首尾一貫した判断ができる。毎日するべきことに対して予定を立てたり、状況を判断できる。
いくらか困難  日々繰り返される日課については判断できるが、新しい課題や状況に直面した時にのみ判断に多少の困難がある。
見守りが必要 判断力が低下し、毎日の日課をこなすためにも合図や見守りが必要になる。
判断できない ほとんどまたは全く判断しないか、判断する能力が著しく低い。

【6】本人が要求や意思、緊急の問題等を表現したり伝えたりする能力を評価します。以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけてください。会話に限らず、筆談・手話あるいはその組み合わせで表現される内容で評価しても差し支えありません。(厚労省/主治医意見書記入の手引き)

伝えられる 自分の考えを容易に表現し、相手に理解させることができる。
いくらか困難  適当な言葉を選んだり、考えをまとめるのに多少の困難があるため、応対に時間がかかる。自分の意思を理解させるのに、多少、相手の促しを要することもある。
具体的要求に限られる 時々は自分の意思を伝えることができるが、基本的な要求(飲食、睡眠、トイレ等)に限られる。
伝えられない ほとんど伝えられない、または、限られた者にのみ理解できるサイン(本人固有の音声あるいはジェスチャー)でしか自分の要求を伝えることができない。

【7】申請者に認められる認知症の周辺症状の有無について、該当する□にレ印をつけてください。有の場合は、以下の定義を参考にして、該当する□にレ印をつけてください。複数の状態が認められる場合は、該当する□のすべてにレ印をつけてください。その他に該当する場合には、認められる具体的な状態について( )内に記入してください。

なお、認知症の周辺症状として列挙していますが、その他の疾患で同様の状態が認められる場合も、該当する□にレ印をつけてください。(厚労省/主治医意見書記入の手引き)

幻視・幻聴

幻視とは、視覚に関する幻覚。外界に実在しないのに、物体、動物、人の顔や姿等が見えること。

幻聴とは、聴覚領域の幻覚の一種。実際には何も聞こえないのに、音や声が聞こえると感じるもの。

妄想 病的状態から生じた判断の誤りで、実際にはあり得ない不合理な内容を、正常を超えた訂正不能な主観的確信をもって信じていること。これに対し、訂正可能である場合は錯覚という。
昼夜逆転 夜間不眠の状態が何日間か続いたり、明らかに昼夜が逆転し、日常生活に支障が生じている状態。
暴言 発語的暴力をいう。
暴行 物理的暴力をいう。
介護への抵抗 介護者の助言や介護に抵抗し、介護に支障がある状態。単に助言に従わない場合は含まない。
徘徊 客観的には、目的も当てもなく歩き回る状態。認知症だけでなく心因性の葛藤からの逃避的行為やその他急性精神病等でもみられる。
火の不始末 たばこの火、ガスコンロ等あらゆる火の始末や火元の管理ができない状態。
不潔行為 排泄物を弄んだり撒き散らす場合等をいう。体が清潔でないことは含まれない。
異食行動 食欲異常の一種。正常では忌避するような物体、味に対して特に異常な食欲や嗜好を示すこと。
性的問題行動 周囲が迷惑している行為と判断される性的な問題行動。

【8】認知症以外の精神・神経症状があれば、「□有」にレ印をつけ、その症状名を記入してください。有の場合、専門医を受診している場合は「□有」にレ印をつけ、( )内に受診の科名を記入してください。また、申請者の状態から判断して、以下に挙げる定義の中からあてはまるものがあれば、症状名に記入してください(厚労省/主治医意見書記入の手引き)。

失語 正常な言語機能をいったん獲得した後、多くは大脳半球の限定された器質的病変により、言語(口頭言語と文字言語の両方)表象の理解・表出に障害をきたした状態。
構音障害 俗に“ろれつが回らない”という状態。構音器官(咽頭、軟口蓋、舌、口唇等)の麻痺による麻痺性構音障害と、筋相互の間の協調運動障害による協調運動障害性構音障害とがある。後者は運動失調によるものと、錐体外路性運動障害によるものがある。
せん妄 意識変容の一つ。軽度ないし中等度の意識混濁に妄想、錯覚、偽幻覚、幻覚、不安・恐怖、精神運動性の興奮を伴う。夜間に起こりやすい(夜間せん妄)。
傾眠傾向 意識の清明性の障害。意識混濁は軽度で、反復して強い刺激を与えればやや覚醒状態に回復するが、放置すればただちに入眠してしまうような状態。
失見当識 見当識の機能が失われた状態。多くの場合、意識障害がある際にみられる(意識障害性)ため、意識障害の有無をみる必要がある。その他、認知症等で記銘力障害のある場合(健忘性)、妄想によって周囲を正しく判断していない場合(妄想性)等にも認められる。
失認 局在性の大脳病変によって起こる後天性の知覚と認知の障害で、ある感覚を介する対象認知が障害されているが、その感覚自体の異常、また、知能低下、意識障害等に原因するとはいえず、また他の感覚を介すれば対象を正しく認知できるもの。視覚失認及び視空間失認、聴覚失認、触覚失認、身体失認等に大別される。
失行 随意的、合目的的、象徴的な熟練を要する運動行為を行うことができない状態で、麻痺、運動失調等の要素的運動障害、また失語、失認、精神症状等で説明できないもの。局在性の大脳病変で起こる後天性の行為障害。
5.特記すべき事項

厚労省/主治医意見書記入の手引きによると「5.特記すべき事項」欄には次のような項目を記入することが求められています。

 

申請者の主治医として、要介護認定の審査判定上及び介護保険によるサービスを受ける上で、重要と考えられる事項があれば、要点を記入してください。特に、他の項目で記入しきれなかったことや選択式では表現できないことを簡潔に記入してください。口腔内の状況から口腔清潔に関して、特に留意事項があれば、要点を記載してください。

また、専門医に意見を求めた場合にはその結果、内容を簡潔に記入してください。情報提供書や身体障害者申請診断書等の写しを添付していただいても構いません。なお、その場合は情報提供者の了解をとるようにしてください。

なお、平成21年度の要介護認定の見直しでは、調査員ごとのバラツキを減らすとともに、介護の不足等も適切に把握できるよう、認定調査の選択肢について、調査員の方に、できるだけ見たままを選んでいただき、介護認定審査会において、認定調査票の特記事項や主治医意見書の内容から、申請者に必要な介護の手間について総合的に把握し、判定することとしました。したがって、申請者にかかる介護の手間をより正確に反映するために、主治医意見書の重要性が増しており、主治医意見書の「5.特記すべき事項」に、申請者の状態やそのケアに係る手間、頻度等の具体的内容についても記載してください。

成年後見登記事項証明書


証明書から分かること

成年後見登記に関する証明書の見本は、こちら(証明書の見本について/東京法務局/211002最終閲覧)をご参照ください。

「登記事項証明書」を取得すれば、管轄家庭裁判所、後見等開始の審判が確定した日、成年後見人の住所氏名などが分かります。

「登記されていないことの証明書」を取得すれば、「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がないこと」が証明できます。

証明書の取得方法

四親等内の親族であれば取得することが可能です。

取得方法については、こちら(成年後見登記事項証明書について/東京法務局/211002最終閲覧)をご参照ください。

後見開始審判申立書の添付書類


成年後見開始開始申立を裁判所に行なうときには、その添付書類として(成年後見用)診断書を添付します。利害関係人であれば、家庭裁判所に対して閲覧請求をすることによって閲覧することが可能です。

管轄裁判所などが分からないときには、成年後見登記事項証明書を先に取得します。

参考文献


  • 藤井伸介ほか著「ストーリーと裁判例から知る遺言無効主張の相談を受けたときの留意点」日本加除出版/令和2年

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