「資本金の額の減少」は、様々な目的で行なわれます。
また、「資本準備金の減少」は、登記が発生しないため失念しがちですが「資本金の額の減少」同様、厳格な手続きが必要です(減少する資本準備金の全額を資本金に組入れる場合を除く。会社法449)。
目的に応じた手続きを採用することが大切です。
| もくじ | |
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| 減資の種類 | 減資の目的 | 減資額の処理 | BSへの影響 |
| 実質上の減資【1】 | 現実に株主への払戻しなどを行ない、資本金を減少させる【2】 | 株主への払戻など | 会社の純資産が減少 |
| 名目上の減資 | 欠損金填補のため【3】 | 欠損金の填補 | 会社の純資産は変化なし(すでに欠損金が出ている)。 |
| 欠損金填補により利益配当を可能とするため【4】 | |||
| その他の減資 | 大会社(資本金5億円以上【5】)の要件から外れることで機関設計の簡素化を図るため | 準備金などへ | 資本金が準備金に名前を変える。純資産の変化はない |
| 外形標準課税の適用外(資本金1億円以下)の効果を得るため | |||
| 業種ごとに定められる「中小企業」の要件を充足させ助成金等を受給できるようにするため | |||
| 円滑化法が定める遺留分特例や納税猶予を利用できるようにするため | |||
| 法人住民税の税率を下げる | |||
| 再生などで、株主を入れ替えるための100%減資&増資 |
【1】実質上の減資は「資本金の額の減少」+「剰余金の配当」と整理されるため、「剰余金の配当規制」が適用されます。
すなわち、
というルールがあります。
【2】例えば次のような場合です。
資本金2000万円の会社が1000万円に減資し、減少した1000万円を株主に払い戻す
【3】「欠損填補とは何か?」については、当メディアの「株式会社の計算(はじめに)」をご参照ください。
【4】例えば次のような場合です。
資本金2000万円の会社が1000万円の欠損金を出した場合、1000万円に減資することにより、欠損金を相殺する。また、欠損金がなくなる結果、株主への配当が可能となる。
【5】大会社の定義は、会社法2条6号。
| 会社法第2条(定義) | |
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この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。 イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第439条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第435条第1項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が5億円以上であること。 ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること。 |
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大会社に該当するか否かの判断は、「最終事業年度に係る貸借対照表」を基準に行われます。これは、定時株主総会で承認または報告された最も新しい貸借対照表を指します。したがって、各事業年度における定時株主総会の時点で、大会社の要件に該当するかどうかが判断されます。
このため、事業年度の途中で増資や借入れにより資本金や負債の額が基準を超えたとしても、その時点では直ちに大会社とはなりません。例えば、3月決算の会社が期中に資本金が5億円以上になった場合でも、その事業年度の貸借対照表が承認・報告される翌年の定時株主総会の時点ではじめて大会社に該当することになります。
(相澤哲,葉玉匡美,郡谷大輔『論点解説 新・会社法千問の道標』商事法務/2010/277頁、江頭憲治郎『会社法コンメンタール1―総則・設立⑴』商事法務/2022/31頁など)
| 原則 | 株主総会の特別決議(会309Ⅱ⑨) |
| 例外① |
定時株主総会で減資を決議する場合で、かつ、資本金の減少額の全額を欠損填補に充当する場合
→株主総会の普通決議(会309Ⅱ⑨かっこ書き) |
| 例外② |
株式会社が株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合において、当該資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないとき →取締役決定(取締役会設置会社では、取締役会決議)(会447Ⅲ)。 |
議題・議案としては次のとおりになります(会社法447・452、会社計算規則)。
「欠損填補とは何か?」については、当メディアの「株式会社の計算(はじめに)」をご参照ください。
第1号議案 資本金の額の減少の件
※会社法447
第2号議案 剰余金処分の件(資本金の額の減少の効力発生を条件とする)
※会社法452、会社計算規則153 |
会社計算規則151
現在の資本金額は書かないこと。∵急な増資やストックオプション行使に対応するため。
※こちらに記載のない登記につきましても、全ての登記に対応可能です。
記載のない場合、お問い合わせをお願いいたします。
※手数料には、基本的な議事録などの作成報酬を含みます。
※顧問契約を締結いただいている場合、割引きがございます。
| 業務の種類 | 司法書士の手数料 | 実費 | |
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自己株式の消却 |
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44,000円(税込) | 35,000円 | |
| 株式会社の減資(資本減少) | |||
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176,000円(税込) | 160,000円(決算公告・減資公告み) | |
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有限会社の減資(資本減少) |
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165,000円(税込) | 100,000円(減資公告込み) | |
| 株主総会招集通知の作成・発送代行及び報告 | |||
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33,000円(税込)~ に発送先1名様ごとに1,100円を加算 |
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| 株主総会シナリオ・想定問答集作成 | |||
| 55,000円(税込)~ | |||
| 株主総会立会 | |||
| 55,000円(税込)~ | |||
減資しても、発行済株式総数は減りません。減資に加えて、株式数も減らしたい場合は、「株式併合」又は「自己株式の取得・消却」が必要です。
⇒ 自己株式取得の規制(会社法461条)が適用されます。
分配可能額=その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額ー自己株式帳簿価額(会461ほか)
減資しても、資本金が減り、広義の資本剰余金になるだけで、株主資本内部の振替えに過ぎません。
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