契約書における「費用負担」の定め方


契約書の各条項について、司法書士が解説するシリーズ。

この記事では「費用負担」に関する条項の定め方について、司法書士が解説しています。

もくじ
  1. 費用負担者の原則
  2. 費用負担者の定め方
  3. キッチリした契約書を作成したいときは「司法書士による契約書作成・精査サービス」
  4. 人気の関連ページ
  5. 参考文献等

費用負担者の原則


契約で何も決まっていないときに適用される「民法の原則」

業務委託契約が、成果物あり型(請負契約)なのか、成果物なし型(委任契約)なのかによって、原則的な費用(実費)負担者が変わります。

 

 

業務委託契約(成果物あり型)

=請負契約

業務委託契約(成果物なし型)

=委任契約

法律の規定 民法632~642 民法643~656
契約の目的

仕事の完成

 ▼

依頼者の望む結果が完成しなければ契約違反。

専門知識に基づく事務等の処理

 ▼

依頼者の望む結果が出なくても契約違反ではない。

契約の例
  • HP制作契約
  • 建物建築契約
  • HP改善コンサルティング契約
  • 司法書士と企業との顧問契約
費用負担

受注者負担が原則(民法485)

発注者負担が原則(民法649、650)

また、売買契約の場合には、当事者双方が等しい割合で負担する(民法558)とされています。

揉めたくないときは、契約でキッチリと定めておく

今回締結する契約が、どの契約類型なのかハッキリしている場合には良いのですが、請負契約と委任契約、両方の契約の特徴をもった契約になることもあり得ます。

そんなときでも、費用(実費)負担について揉めることのないように、契約書に明記しておきましょう。

 

民法の原則を変更したいときは、契約で明示しておく

民法の原則を変更したいとき(下記のような場合)には、契約で明示しておく必要があります。

  • 請負契約なのに、材料費を注文主に負担させたいとき、注文者と受注者が折半で負担したいとき
  • 売買契約なのに、契約書に貼る印紙代を買主だけ(売主だけ)で負担させたいとき
  • 委任契約なのに、費用を受注者が負担したいとき、注文者と受注者が折半で負担したいとき

費用負担者の定め方


受注者の全額負担とする場合

  1. 請負人が請負工事を遂行するために要する工事用材料及び費用は、別途合意したものを除き全て請負人の負担とする。
  2. 注文者は、原材料費等の高騰や資材不足等、注文者及び請負人の責めに帰さない理由により請負人が追加費用の負担や工期の延長を求めた場合、協議に応じ、合理的な変更契約を締結しなければならない。協議に当たっては、工事に係る価格の変動の内容その他の事情を考慮する。

注文者の全額負担とする場合

  • 請負人が請負工事を遂行するために要する費用は、別途合意をしたものを除き全て注文者の負担とする。

委託する業務ごとに個別に決める場合

今回の契約書を「基本契約書」としておいて、詳細は「覚書」などで決める場合の「基本契約書」の記載例です。 

第○条(業務、料金等)

 
  1. 甲及び乙は、次に掲げる事項について別途覚書に定める。
    ⑴ 本件業務の内容及び範囲(本件業務の成果(以下「成果物」という。)を納品する場合にはその内容)に関する事項
    ⑵ 本件業務の委託の期間並びに料金、その支払期日及び方法等に関する事項
    ⑶ 本件業務の履行のために費用が生じる場合には負担者(甲乙双方が負担する場合は負担割合)、その精算方法等に関する事項
    ⑷ <以下略>
  2. 本契約に定める内容と前項の覚書に定める内容に相違がある場合には、前項の覚書に定める内容が優先される。

キッチリした契約書を作成したいときは「司法書士による契約書作成・精査サービス」


人気の関連ページ

参考文献等

この記事を執筆するために下記文献等を参考にしました。

  • 契約法研究会(編集)『現代契約書式要覧』新日本法規/2019
  • 阿部・井窪・片山法律事務所(編)『契約書作成の実務と書式(第2版)』有斐閣/2021
  • 弁護士幅野直人(著)『企業法務1年目の教科書 契約書作成・レビューの実務』中央経済社/2024
  • 阿部・井窪・片山法律事務所(編著)『企業における裁判に負けないための契約条項の実務』青林書院/2024