「株主名簿の閲覧」を求められたときどうするのか?

「株主名簿記載事項証明書の発行」ではダメなのか?

 

キッチリ分けて理解し、不適切に全株主の情報を開示しないように対応する必要があります。

株主名簿と株主名簿記載事項証明書


1.株主名簿そのものを閲覧・謄写(コピー)させる場合と、

2.株主名簿記載事項証明書を交付する場合

一番大きな違いは、全株主の情報が記載されているか否かです。

 

両手続の違いを適切に理解し、安易に全株主の情報を明らかにしないように、注意しましょう。

  株主名簿そのものの閲覧・謄写 株主名簿記載事項証明書
記載されている人  全株主 請求した人のみ
請求できる者

株主

会社債権者

株券不発行会社の株主
請求方法

理由を明らかにして

理由は不要
記載されている事項

1.株主の氏名・住所

2.株主ごとの持株数(株式の種類)

3.株主が株式を取得した日

(4.株券発行会社の場合 株券番号)

1.株主の氏名・住所

2.株主ごとの持株数(株式の種類)

3.株主が株式を取得した日

デメリット

不用意に全株主の情報を明らかにすると・・・

✔競合他社に情報が漏れるなどのリスク

✔株主の個人情報の漏洩

などの問題が生じかねません。

特にありません。

株主名簿の閲覧請求権者


株主および会社債権者は、会社の営業時間内は、いつでも株主名簿の閲覧又は謄写を請求をすることができます。請求する場合は、「請求の理由」を明らかにしてしなければなりません(会125Ⅱ)。

 

また、開示請求を拒否された株主・債権者は、「株主名簿の閲覧謄写請求の仮処分」を申し立てることができます。このため、会社側は、開示拒否した理由を後日証明できるようにしておきます。

 

請求した株主・債権者が自己の情報のみの確認を求めているのであれば、株主名簿記載事項証明書の交付で代替できないか、確認しましょう。

請求内容 拒否の可否
理由なき請求 拒否できる
抽象的な理由による請求  拒否できる 
「株主の権利の確保又は行使に必要」という理由による請求 拒否できる∵抽象的
「株主総会で権利行使するために必要」という理由による請求 拒否できる∵抽象的
「少数株主権行使のために協力者を探したい」という理由による請求 拒否できない
「株主総会での委任状を勧誘したい」という理由による請求 拒否できない
「架空名義の株主がいないか確認したい」という理由による請求 拒否できない
不当な目的の開示請求 拒否できる(会125Ⅲ①)
「株主名簿を売却したいから」という理由による請求 拒否できる
「訪問して営業したいから」という理由による請求 拒否できる
会社業務の執行を妨げる目的による請求 拒否できる(会125Ⅲ②)
株主の共同利益を害する目的による請求 拒否できる(会125Ⅲ②)
請求者が会社と実質的に競争関係にある事業を営んでいるとき【1】 拒否できる(会125Ⅲ③)
請求者が会社と実質的に競争関係にある事業に従事しているとき【1】 拒否できる(会125Ⅲ③)
株主名簿の情報を第三者に売るための請求 拒否できる(会125Ⅲ④)
過去2年以内に、株主名簿の情報を第三者に売ったことがあるとき【2】 拒否できる(会125Ⅲ⑤)

【1】会社は「閲覧者が競合他社であること」を証明すれば、拒否できる。

これに対し、閲覧者は「株主としての正当な権利行使目的であること」を証明すれば、会社は請求を拒否できない(新谷勝著・民事法研究会「第2版・会社訴訟・仮処分の理論と実務」576p)

【2】貴社以外の他社の株主名簿を2年以内に売った場合も含まれます。∵名簿屋を排斥する。

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