不動産仲介契約(媒介契約)の種類


不動産会社に物件の売却を依頼する場合、媒介契約を結ぶ必要があります。

この記事では、まず①「仲介」とも「媒介」ともいわれる不動産会社との契約について、次に②3種類ある不動産会社との媒介契約の種類について解説しています。

もくじ
  1. 仲介、媒介、仲立の違い
  2. 専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の違い
    1. 売主の義務
    2. 不動産会社の義務
    3. 売主のメリット・デメリット
    4. 不動産会社のメリット・デメリット
    5. 条文の規定
  3. 不動産会社の選び方
    1. テレビCMをしている会社は安心か?
    2. 良い不動産会社は、どうやって選べば良いのか?

〔凡例〕この記事では、下記のとおり略記します。

  • 法:宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)
  • 令:宅地建物取引業法施行令(昭和三十九年政令第三百八十三号)
  • 規則:宅地建物取引業法施行規則(昭和三十二年建設省令第十二号)

仲介、媒介、仲立の違い


ほとんど同じ意味です。

  仲介 媒介 仲立

読み

ちゅうかい ばいかい なかだち

意味

法律用語ではない。

法律用語。

宅地建物取引業法34の2ほかで使われる。

法律用語。

商法502⑪、同543-550で使われる。

商法における「仲立」の定義は商法543条が定める。

補足

  • 当事者間に立って取引成立を助けること。
  • 当事者間に立って取引成立を助けること。
  • 商人間の取引を仲立するのが「商事仲立」
  • 当事者の少なくとも一方が一般人の場合は「民事仲立」
商法第543条(定義)
  この章において「仲立人」とは、他人間の商行為の媒介をすることを業とする者をいう。
商法第550条(仲立人の報酬)
 
  1. 仲立人は、第546条の手続を終了した後でなければ、報酬を請求することができない。
  2. 仲立人の報酬は、当事者双方が等しい割合で負担する。

専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の違い


売主の義務、不動産会社の義務、メリット・デメリットの順でご説明していきます。

売主の義務

    専属専任媒介 専任媒介 一般媒介
定義規定 規則15の9② 法34の2Ⅲ (規則15の9③)
       

他社に重ねて依頼 不可 不可 可能
売主自ら発見した相手と取引 不可 可能 可能
売主への拘束 厳しい   ゆるい

売主への拘束が一番少ない「一般媒介契約」が有利そうに見えます。

それでは、なぜ売主は、拘束が一番厳しい「専属専任媒介契約」を選ぶ方が多いのでしょうか?

その答えを探るため、次は、不動産会社の義務を見てみましょう。

 

不動産会社の義務

    専属専任媒介 専任媒介 一般媒介
定義規定 規則15の9② 法34の2Ⅲ (規則15の9③)
       

媒介契約書の作成交付義務 あり(法34の2Ⅰ) あり(法34の2Ⅰ) あり(法34の2Ⅰ)
媒介契約書の有効期間 3か月以内(法34の2Ⅲ) 3か月以内(法34の2Ⅲ) 法規制なし(法34の2Ⅲの反対解釈)
指定流通機構(レインズ)への物件登録

必要(法34の2Ⅴ)

媒介契約締結から5日以内(規則15の10かっこ書)

必要(法34の2Ⅴ)

媒介契約締結から7日以内(規則15の10)

不要(法34の2Ⅴ反対解釈)
売買の申込みがあったとき遅滞なく売主へ報告 必要(法34の2Ⅷ) 必要(法34の2Ⅷ) 必要(法34の2Ⅷ)
売主への定期報告 1週間に1回以上必要(法34の2Ⅸかっこ書) 2週間に1回以上必要(法34の2Ⅸ) 不要(法34の2Ⅸ反対解釈)
不動産会社の義務 厳しい   ゆるい

なるほど。

一般媒介は、定期報告すら不要なんですね。

それならば「専属専任媒介」や「専任媒介」でお願いしようとなるのも、分かりますね。

次は、メリット・デメリットを確認しましょう。

 

売主様のメリット・デメリット

  専属専任媒介 専任媒介 一般媒介

  • 窓口が一本化され連絡が楽
  • 積極的な販売活動が期待できる
  • 提起報告頻度が高い(週1回以上)
  • 窓口が一本化され連絡が楽
  • 積極的な販売活動が期待できる
  • 自己発見取引が可能

 

  • 複数社に依頼できる。
  • 囲い込みリスクが低い
  • 自己発見取引が可能

 

  • 自己発見取引不可(自分で買主を見つけても仲介手数料が必要)
  • 1社の力量に依存することになる。
  • 1社の力量に依存
  • 囲い込みリスク
  • 情報流通が限定される場合あり
  • 営業活動が消極的になりやすい。
  • 進捗報告義務がない
  • 連絡や調整が煩雑【1】

【1】値下げをするときに各社の足並みが揃わず、同じ不動産であるのに複数の価格がインターネット上に掲載され、トラブルになることもある。

 

不動産会社のメリット・デメリット

売主様のメリット・デメリットと表裏一体となりますので、不動産会社のメリット・デメリットも把握しておきましょう。

  専属専任媒介 専任媒介 一般媒介
メリット
  • 確実に仲介手数料が得られる(少なくとも売主)
  • 売主・買主の両方から手数料を得られる可能性もある。
  • 自己発見取引を断れる。
  • 専属専任と同様、仲介手数料が得やすい
  • 売主・買主両方から手数料の可能
  • あまりない。
デメリット
  • 義務が一番厳しい。
  • 売主が他社や自身で売却できないため、売れないと契約解除される。
  • 自己発見取引を断れない。
  • 他社で成約した場合は手数料を得られない
  • 競合が多く、手数料を得られる保証がない
  • 広告費や人件費が無駄になるリスクがある。

条文の規定

宅地建物取引業法が定める「媒介契約の種類ごとの義務」は次のように規定されています。 

宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約)
 
  1.  宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
    1. 一 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
    2. 二 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
    3. 三 当該宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
    4. 四 当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(第三十七条第一項第二号の二において「建物の構造耐力上主要な部分等」という。)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。第三十五条第一項第六号の二イにおいて同じ。)を実施する者のあつせんに関する事項
    5. 五 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
    6. 六 当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項
    7. 七 報酬に関する事項
    8. 八 その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
  2. 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
  3. 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。【強行規定】
  4. 前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。【強行規定】
  5. 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。【強行規定】
  6. 前項の規定による登録をした宅地建物取引業者は、第50条の6に規定する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。【強行規定】
  7. 前項の宅地建物取引業者は、第五項の規定による登録に係る宅地又は建物の売買又は交換の契約が成立したときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない。
  8. 媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあつたときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない。【強行規定】
  9. 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、前項に定めるもののほか、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあつては、一週間に一回以上)報告しなければならない。【強行規定】
  10. 第3項から第6項まで及び前二項の規定に反する特約は、無効とする。
  11. 宅地建物取引業者は、第一項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面に記名押印し、これを交付したものとみなす。
  12. 宅地建物取引業者は、第6項の規定による書面の引渡しに代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を引き渡したものとみなす。

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