相続手続を分類しますと、3段階に分かれます。
「Ⅰ事前調査」「Ⅱ相続人間での調整」「Ⅲ名義変更」です。
この記事では、インターネット上で見つけた『間違いだらけの相続知識』をこの3段階に分類して、解説しています。
追記しました。
もくじ | |
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〔凡例〕この記事では、次の法令が出てきます。法令名が長いときは、次のとおり略記します。
1. 相続手続は簡単?
YESでNO。簡単かどうか「フタを開けてみないと分からない」それが相続手続きです。
相続登記漏れで苦労した話
自分で相続登記手続をした方に聞きました「相続手続で苦労した理由!ベスト10」
2. 亡くなって、なくても相続開始?
NO。亡くなって始めて相続が開始します。
お客様が「相続登記を依頼したい」とおっしゃるので、お亡くなりになった年月日をお尋ねするとお叱りを受けることがあります。「目の前にいるのに、死んでるように見えるのか?」または「親父はまだ生きてます…」どうやら「生前贈与」のことを相続と表現なさった模様です。
「財産分与の登記をお願いしたい」とアポを取られたお客様に「いつ離婚されたんですか」と尋ねてもお叱りを受けます。遺言を書くことや、生前に贈与をすることをも財産分与と表現なさる方が多いです。
ところが、相続も、生前贈与、財産分与も、そして遺言も法律用語であり、定義が決まっています。
世の中には、誤った情報が溢れています。
「相続」とは、被相続人の死亡によって開始する相続人への財産を引き継ぐ手続のことをいいます(民法882条)。
「生前贈与」とは、死ぬ前に財産を人にあげることをいいます(民法549条)。単に「贈与」ともいいます。
「遺贈」とは、遺言による贈与です(民法964条)。
「死因贈与」とは、生前に死んだらあげる「契約」をすることです(民法554条)。
「財産分与」とは、離婚を契機に財産の所有者を一方から他方へ変えることです(民法768条)。
3. 司法書士報酬は高い?
NO。財産の種類と量(金額)による。また、同じ手続でも、遺産のパーセンテージで計算する司法書士、手続きごとに加算する司法書士がおります。
どちらが良い、どちらが安いとは一概に言えません。
4. 銀行の遺産整理業務や遺言信託は信用できる?
NO。
VS士業の遺産整理
VS無資格コンサル
5. 銀行預金は、カードと暗証番号が分かるなら、凍結される前に出金した方がよい?
NO。
口座凍結とは?
犯罪?
預金仮払い、預金の仮分割の仮処分を使いましょう。
6. まず預貯金の解約をしてから、不動産の名義変更のために司法書士へ行けば良い?
NO。相談に行く順番が違います。
(法定相続情報一覧図)
7. 死亡保険金は、戸籍を集めて、遺産分割協議をしてからでないと受け取れない?
NO。被保険者死亡の戸籍と受取人の書類があれば、受け取られます。
8. 借金の調査は完璧にできる?
NO。
日本の信用情報機関は3社。
この3社では調査しきれない借金があります。
連帯保証、個人間の貸借
9. 他の家族はこの預金の存在を知らないから、独り占めできる?
NO。然るべき方法で調査することにより、バレます。
10. 昔、遺言を書いてもらったから安心?
NO。遺言は書き直すことが可能で、しかも、後に作成された遺言が勝ちます。
死因贈与契約
11. 自分が全部もらう公正証書遺言を預かっているからゆっくり手続きすればよい?
NO。記事「相続は早い者勝ちになりました。」をご参照ください。
12. 封筒表面に遺言書と書いてある封筒を一人で開けても問題ない?
NO。★
13. 封のある遺言書を開ければ、無効になる。
NO。★
14. 自分に不利な遺言を隠したまま遺産分割協議に参加して、コッソリ相続して良い?
NO。相続欠格★
15. 自分に有利な遺言でコッソリ相続手続きをして、他の相続人には何も知らせなくて良い?
NO。相続欠格★
16. 自筆の遺言なのに、押印がない。自筆遺言として無効だから捨てていい?
NO。死因贈与契約の申込書への転換
17. 娘は、嫁に行ったから相続人ではない。
NO。お嫁に行ったお嬢さんも相続人です。
18. 息子は養子に行ったから相続人ではない。
NO。養子に行った方は、養親の相続人であると同時に、実親の相続人でもあります。
19. 相続人全員が同意すれば、誰でも(例えば、内縁の妻も)相続できる?
NO。相続人は、法律で決まっています。
20. 内縁の妻とは、婚姻届を出していないけれど、20年同居したので相続権がある?
NO。日本では事実婚の妻に相続権はありません。事実婚にも相続権を認める国もあります。
特別寄与料?他に相続人がいなければ特別縁故者
21. 子どもがいなければ、配偶者が全部相続する?
NO。兄弟姉妹。
22. 子どもからの相談「父が危篤。母を亡き者にすれば、子どもが独り占めできますか?」
NO。実行すると相続欠格になる可能性があります。
23. 相続税以外に忘れちゃいけない相続に関連する税金はない?
(準確定申告)
24. 「法定相続情報一覧図」は、法務局に本人確認書類だけ持って行けば、もらえますか?
👉️戸籍も自分で集め、一覧図も自分で作成して持参します。
25. 相続開始からもうすぐ3か月経つ。まだ借金の調査などが終わっていないけど、打つ手なし?
(熟慮期間の伸長)
26. 貸金業者から「半年前にAさんが亡くなった。あなたはAさんの相続人だから支払え」という請求書を受け取った。詐欺だから放置しておいてよい?
👉️(死亡から3か月経っていても相続放棄できる。熟慮期間の起算点)
27. 子ども全員が相続放棄申述すれば、母が単独で相続できる?
👉️父の兄弟姉妹も相続人になってしまい、母は父の兄弟姉妹と遺産分割協議をしなければならなくなります。
28. 相続放棄は「何も要らない」と個人的に宣言すれば良い?
👉️相続分の放棄と相続放棄申述は別
29. 相続放棄しても死亡保険金は受け取れる?
👉️相続放棄しても、死亡保険金を受け取ることは可能です。受取人が指定された生命保険金は(相続開始によって相続財産になるのではなく)生命保険契約の効力が発生したことで、直接、受取人の財産になります。
一方、入院給付金は、相続財産になるので、相続放棄した方は、受け取ることができません。
30. プラス財産の範囲内でマイナス財産も引き継ぐという限定承認手続は簡単?
👉️限定承認は、相続人全員で裁判所に申し立てる必要があるほか、税金(★税)の計算も必要で、とても難しい手続きです。
31. 遺産分割協議は、相続人全員が同席しないとできない?
👉️いいえ。書類のやり取りだけで完結することもあります。遺産分割協議書も同じ1枚に全員が押印する必要はなく、全く同じ遺産分割協議協議書であれば問題なく成立します。
32. 土地を1/2ずつ共有で相続するということは、物理的に東西南北で分けるという意味?
👉️一つの土地を共有する(全部を使える)ということです。物理的に分けるには分筆登記後、共有物分割登記が必要です。分筆先行→一気に相続登記も可能?
33. 田舎には、長男が全部相続するルールがある?
👉️ない。
34. 都会では、法定相続分で分けなければならない?
👉️そんなルールはない。
35. 遺言がなければ、法定相続分で自動的に分割される。
👉️遺産分割協議を行うことで、法定相続分とは異なる割合で相続することも可能です。
36. 遺産分割協議に期間制限はないからゆっくりやろう?
👉️登記義務、特別受益、寄与分の主張期限が設けられたので。。。
37. 遺産分割協議書に「Aが土地、AはBに500万円支払う」とあって、AがBに支払わないときは、Bは遺産分割協議を解除できる?
👉️できません。理由?
38. 遺産分割協議が成立したけれど、遺産分割協議書がない(なくした)。協力してくれない相続人がいるときは、遺産分割調停しかない?
👉️登記請求訴訟など
39. 相続登記するときは、権利証がないとできない?
👉️できる。
40. 相続登記では権利証は不要?
👉️非課税不動産のあぶり出し、住民票の除票ないとき)
41. 相続登記をしたら相続税が課税される?
👉️相続登記と相続税は、リンクしていません。
42. 不要な土地のみ切り離して相続できる?
👉️NO。ただし、相続土地国庫帰属制度を使えばできるかも。
43. 大昔に発生した先々代の相続は、相続登記義務化の対象外?
👉️いいえ。義務化の対象です。
44. 司法書士に相続を依頼したら、不動産会社からDM(不動産売ってください)が来た。司法書士が情報を売ったの?
👉️もちろん、いいえ。登記を管轄している法務局は、法律によって登記申請書受付帳を作成保管する義務があります。不動産会社はこの登記申請受付帳を閲覧して相続登記をした直後のお宅にDMをしているのです。なお、法務省のエライ方の家も相続したら大量のDMが来ました。その結果、近く法改正される予定です。
45. 相続人申告登記制度が始まって、相続登記は簡単になった?
👉️相続人申告登記はあくまで暫定的なもので、本体の相続登記は何も簡単になっていません。
46. 大昔(明治、大正)の抵当権が見つかったけど、古すぎて消せない?
👉️休眠担保抹消という特殊な方法で消すことができます。
47. 遺言の保管場所は、銀行の貸金庫がベスト?
👉️ワースト
48. 親父がオーストラリア人と再婚して、オーストラリアにいる。親父は「日本にある親父の不動産は、自分が相続すればよい」と言っているが問題ない?
👉️(渉外相続)
49. 弟には、家庭裁判所で遺留分放棄させたから親父の財産は、兄一人のもの?
👉️親父の遺言必要。なければ無意味。
50. 相続対策は金持ちだけがするもの?👉️ご本人のための財産管理対策、争続対策、相続税対策