遺言執行者選任申立


遺言書中で遺言執行者の指定がなされている場合には、遺言執行者は、相続人の協力を得ることなく遺言書に記載された内容を実現することができます。
ところが、遺言書中で遺言執行者の指定がない場合や、指定があっても遺言執行者がその就任を辞退した場合などにおいて、他の相続人が協力しないときには、家庭裁判所に対して申立をして、新たに遺言執行者を選任してもらい、遺言執行者に遺言の執行を任せることができます。

 

この記事では、遺言執行者の選任について、解説しています。

もくじ
  1. 遺言執行者が必要な場合
  2. 遺言執行者が(必ずしも)必要でない場合
  3. 遺言執行者選任の流れ
  4. 標準的な所要時間
  5. 司法書士の報酬・費用
  6. Q&Aよくあるお問合せ
  7. 人気の関連ページ

遺言執行者が必要な場合


次のケースでは遺言執行者が必要です。

ケース1■ 遺言で認知している場合

ケース2■ 遺言で相続人廃除している場合、廃除を取り消す場合

ケース3■ 遺言どおりの遺産分けに協力しない相続人がいる場合

このような内容の遺言書なのに、遺言書で遺言執行者を決めていない場合には、家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てます。

遺言執行者が必ずしも、必要でない場合?!


一方、次のような場合には、必ずしも、遺言執行者は必要ではありません。あくまでも、遺言の内容によって、遺言執行者選任の要否が決まります。無駄な遺言執行者の選任申立をなさいませぬようご注意ください。

ケース1■ 遺言執行者を決めていなかった。

ケース2■ 遺言書で指定された遺言執行者は、亡くなっていた。

ケース3■ 遺言執行者から就任を拒否された。

遺言執行者選任の流れ


遺言が出てきたが、遺言執行者の指定がない場合、その後の流れは次のとおりです。

【ご注意】封のされている遺言書を開封することは絶対におやめください。
  • 開きそうであっても、開封はダメです。
  • 家庭裁判所外で遺言書を開封した方は、5万円以下の過料に処されます(民法1005)ので、ご注意ください。
  • 最悪、遺言書が無効になってしまうこともありますので、ご注意ください。

以下、封がされていないのが通常である公正証書遺言の流れをご紹介します。

自筆証書遺言の場合には、先に遺言検認申立をする必要があります。

ご連絡

遺言書が見つかったら、お近くの「あなたのまちの司法書士事務所グループ」にご連絡ください。打合わせの日時を決めます。

ご相談

この後の流れ、遺言執行者選任の要否について、アドバイスいたします。

遺言執行者選任申立

家庭裁判所に申し立てます。

管轄は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

遺言執行者の選任

家庭裁判所が選任します。

遺言執行者に就任した旨、相続人に連絡

相続人・受遺者の方々へ司法書士が遺言執行者に就任した旨をご連絡(遺言執行者への就任が不適当な場合には、就任を辞退することもございます。)。

財産目録作成・交付

相続人・相続財産を確定し、財産目録を作成、相続人に交付します。

遺言執行の開始

名義変更などをすすめます。

遺言執行完了

全ての財産(一部の現預金除く)の相続人への引き継ぎ完了

遺言執行者の報酬付与審判申立

家裁に遺言執行が完了したので、適正な報酬を定めるよう申立

現預金の引き継ぎ・報告

遺言執行者の報酬を控除した残額を、相続人へ引き継ぎ・ご報告

標準的な所要時間


申立書作成に1~2週間程度

申立から選任まで2か月程度です。

遺言執行の所要時間は、事案により異なります。

司法書士の報酬・費用


業務内容 司法書士の報酬 実費
遺言執行者選任申立 55,000円(税込) 10,000円程
遺言執行(者の)報酬
  • 遺言書に記載があれば、その金額
  • 遺言執行者と相続人で話し合って決めた金額
  • 家庭裁判所が決定した金額
事案によります

Q&A よくあるお問い合わせ


Q.遺言があります。遺言執行者の指定はありません。次のようなケースでは、遺言執行者の選任は、必要ですか?

次のとおりです。本当に様々なパターンの遺言があるのを見てきました。ここに記載がないものは、司法書士にご相談ください

(平成29年3月・あなまち司法書士事務所・司法書士佐藤大輔)

 

遺言書内容 遺言執行者の要否

特定の財産を「相続させる」

指定された相続人が単独で相続登記を申請できます。

他の相続人の印鑑も不要。→執行者不要

∵人の死亡という事実に基づく権利移転

特定財産を「遺贈させる」

受遺者と相続人全員(又は執行者)との共同で登記申請が必要です。

∵贈与という法律行為に基づく権利移転

┌相続人全員が承諾すれば、遺言執行者は不要です。

└相続人の一人が反対すれば、遺言執行者を選任して、受遺者と遺言執行者が共同で遺贈登記を申請します

割合的包括遺贈や相続分の指定

例)3分の2を長男に

遺産分割手続が必要です。

遺言執行者はする仕事がありません。

遺言執行者は不要です。

相続人以外へ遺贈(贈与)で、相続人が協力してくれないとき

遺言執行者選任が必要です。

認知

必要

相続人廃除

必要

相続人不存在で特定不動産を遺贈

A)遺言執行者あり

遺言執行者と受遺者の共同申請により遺贈登記

(昭15.9.3民甲1116)

B)遺言施行者なし

遺言執行者を選任せず、いきなり相続財産管理人を選任し、受遺者と相続財産管理人の共同申請。

∵相続財産管理人は相続財産法人の代表者

C)遺言執行者と相続財産管理人が併存

法務局&家庭裁判所と要協議

相続人不存在で包括遺贈

遺言執行者と受遺者の共同申請により遺贈登記

(昭33.4.28民甲779)

㊟相続財産管理人は選任されない∵包括受遺者がいるときは相続財産管理人選任の要件である「相続人のあることが明らかでないとき」には当たらない(最判平9.9.12)

【清算型遺贈】

遺言執行者において、不動産・・・その他一切の財産を換価処分し、相続債務・葬儀費用・遺言執行費用・その他諸経費を控除した残額をAに遺贈する

A)相続人がある場合

遺言執行者の単独申請により相続登記

遺言執行者と買主との共同申請により売買登記

㊟相続人・受遺者は、(不動産譲渡)所得税の確定申告が必要

B)相続人がいない場合(包括受遺者がいるとき含む)

遺言執行者の単独申請により相続財産法人への名変

遺言執行者と買主との共同申請により売買登記(登記研究619号219頁)

㊟相続財産管理人の選任は要さない

㊟相続財産法人の法人税申告必要なし

 


Q.遺言執行に関して相談したい。遺言執行者の解任について相談したい。

すでに遺言執行者が選任されていて、遺言執行に関するご相談の場合は、コチラをご覧ください。


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