分譲マンション(区分所有建物)に適用される「区分所有法の基礎」を全て解説したページです。

  1. まず、マンション(区分所有建物)でしか使わない特殊な用語を解説しています。
  2. 次に、マンションに適用されるルールの全体像を解説します。
  3. 最後に、区分所有法の特殊なルールの中身を解説します。
  4. このページを読むだけで、初めての方でも、区分所有法の基礎について理解できます。

マンション(区分所有建物)は、土地や建物の一部を複数の所有者で共有するという特殊な所有形態です。そこで、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)によって、特殊な所有形態を維持するために、特殊なルールが定められています。

もくじ
  1. 区分所有建物(マンション)に関する重要単語
  2. 区分所有建物に適用される3つのルール
  3. 区分所有法の特殊なルール
    1. 自動的に組合員になる。
    2. 区分所有建物と敷地権の分離処分禁止
    3. 管理費・修繕積立金の先取特権(区分所有法第7条の先取特権)
    4. 管理費・修繕積立金の特定承継人への承継
    5. 意思決定への多数決原理の導入
    6. 「共用部分」の共有に関する特殊規定
    7. 民法の新制度の適用除外
    8. 建物が全部滅失した場合の特例

〔凡例〕この記事では、次の法令が出てきます。法令名が長いときは、次のとおり略記します。

  • 民:民法(明治二十九年法律第八十九号)
  • 区分:建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
  • 被災区分:被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(平成七年法律第四十三号)

区分所有建物(マンション)に関する重要単語


区分所有建物

分譲マンションの一つの専有部分のことです。

賃貸マンションの場合は、一棟まるごとを一人の所有者が所有している場合が多数ありますので、区分建物とは言いません。 

団地

同じ敷地内に複数の分譲マンション(区分建物)が建っているものを言います。

専有部分と共用部分

「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいいます(区分2Ⅱ)。

「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分(廊下、階段室、エレベーター等)、専有部分に属しない建物の附属物及び規約により共用部分とされた附属の建物をいいます(区分2Ⅲ、区分4)。

 

理事長と管理者

マンション管理には、専門的知識が必要であるため、集会決議で管理者を選任し、管理を行なわせることも可能です(区分所有法3、25)。

 

管理者の資格には特段の制限はありません。

・区分所有者以外の者でも構いません。

・個人(自然人)・法人どちらでも構いません。

 

マンション管理組合の理事長と、管理者の関係

法人でないマンション管理組合 理事長と管理者は、必ずしも一致しない。【1】
法人であるマンション管理組合 

理事長と管理者は、必ず一致する。 

管理者に関する区分所有法の第4節などは適用されない(区47Ⅺ)

【1】区分所有法上では、理事長と管理者は必ずしも一致しませんが次のような判例もあり、標準規約では条文で定めることによって一致させています。

●東京高裁H2.5.31判決

管理組合の代表者は、区分所有法の定める管理者の選任に必要な議決要件を満たして選任されている限り、その名称の如何にかかわらず、区分所有法上の管理者である。

●マンション標準管理規約(単棟型)第38条第2項

理事長は、区分所有法に定める管理者とする。

管理組合

マンションの管理を行うために、区分所有者全員で構成する団体(区分所有法3)であり、区分所有者一人一人の意向にかかわらず、当然に構成されます。

管理会社

管理組合は、外部の会社にマンション管理(修繕計画の立案、総会等の管理など)を依頼することができます。この場合の、外部の会社のことを「管理会社」といいます。

総会と集会

区分所有法では「集会」という言葉のみ使用され、「総会」という用語は使われていません。

マンション標準管理規約(単棟型)では、次のとおり表現されています。 

マンション標準管理規約(単棟型)第42条
 
  1. 管理組合の総会は、総組合員で組織する。
  2. 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
  3. 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2ケ月以内に招集しなければならない。
  4. 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。
  5. 総会の議長は、理事長が務める。  

つまり、一般的な用語である「総会」と法律用語である「集会」は同じものです。

区分所有建物に適用される3つのルール


区分所有建物には、次の3ルールが適用されます。

「区分所有法」などの法律 「区分所有法」の強行規定は、規約で別の定めをすることは許されない。
「規約」 「区分所有法」の強行規定に反しない範囲で規約を定めることができる。 
集会決議で定める「規範」 「規約」の中で絶対に規定しないといけない事項以外について、「規範」で定めることができる。

この記事では、1つ目の「区分所有法」に焦点をあてて解説します。

これらのルールが適用される人

  • 区分所有者
  • 区分建物の特定承継人、占有者、区分所有者でない管理者

区分所有法の特殊なルール


区分所有法は、民法の特別法として、マンションなどの区分所有建物の特殊性に対応するため、民法の共有に関する原則を一部修正する特殊な規定を設けています。

主な相違点は以下の通りです。

 

1■ 自動的に組合員になる。

区分建物のご購入者(つまり区分所有者)は、自動的に「マンション管理組合の組合員」になります(区分3)。

 

2■ 区分所有建物と敷地権の分離処分禁止

我が国の民法では、土地と建物を別々に処分することができます。

例えば、土地はAさんに、建物はBさんに売却するということも認められます。

ところが、区分所有法は、敷地利用権と区分建物を別々に処分することを認めていません(区分22)。

 

3■ 管理費・修繕積立金の先取特権(区分所有法第7条の先取特権)

マンション管理費や修繕積立金を被保全債権とする先取特権が成立します(区分7)。

マンションにとって、大変重要なマンション管理費や修繕積立金の保護を、強化したものです。

詳しくは、記事「マンションの滞納された管理費・修繕費・積立金の回収#7条先取特権」を参照ください。

 

4■ 管理費・修繕積立金の特定承継人への承継

マンションを購入した場合において、売主がマンション管理費や修繕積立金を滞納していたときには、買主がこれらの支払い義務を引き継ぎます(区分8)。

 

「特定承継」とは、売買や贈与のことをいいます。特定承継の対義語である「包括承継」は、相続や合併のことをいい、前の所有者の権利も義務も丸々全部引き継ぎます。

「特定承継」は、売主の債務(未払いのお金)を引き継がない(承継しない)のが、民法の原則ですので、区分所有法が民法の例外を定めています。

マンションにとって、大変重要なマンション管理費や修繕積立金の保護を、強化したものです。

 

5■ 意思決定への多数決原理の導入

区分所有法は、多数決の概念を導入しています。

  民法の原則 区分所有法
共有物の変更 共有者全員の同意が必要(民251) 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。(区分17Ⅰ)
共有物の管理 共有者の持分の価格の過半数で決定(民252Ⅰ) 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議(区分所有者及び議決権の過半数の同意)【1】で決する。(区分18Ⅰ本文)。
共有物の保存 各共有者(民252Ⅴ) 各共有者がすることができる。(区分18Ⅰただし書)。

【1】「集会の決議」とは、区分所有法又は規約に別段の定めがない限り、〔区分所有者の頭数〕と〔区分所有者の議決権〕との両方について、過半数の賛成です(区分37Ⅰ)。

 

6■ 「共用部分」の共有に関する特殊規定

民法とは異なり、区分所有法は「共用部分」について以下のような制限を設けています。

  民法の原則 区分所有法
使用方法 持分に応じた使用が原則(民249Ⅰ)。 各共有者は共有持分の大小にかかわらず、「共用部分をその用方に従って使用することができる」(区分13)。
分割請求 共有物の分割請求が認められる(民256)。 共用部分の共有持分については、認められない【1】。
持分放棄 共有持分の放棄が認められる(民255)。 共用部分の共有持分については、認められない【1】。
分離処分 ーーー 区分所有者は、専有部分とその共用部分の共有持分を分離して、共有持分のみを単独で処分することは原則としてできません  (区分15Ⅱ)。

【1】後掲『コンメンタール』84頁は、区分12条が民法の適用を排除していることを理由とする。

7■ 民法の新制度の適用除外

近年の民法改正で創設された「所有者不明建物管理命令」や「管理不全建物管理命令」といった制度は、区分所有建物の専有部分および共用部分には適用されません(区分6Ⅳ)。

 ▼

令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、下記3つの管理制度がスタートします。

  • 所有者不明専有部分管理命令(改正区分46-2)
  • 管理不全専有部分管理命令(改正区分46-8)
  • 管理不全共用部分管理命令(改正区分46-13)

 

8■ 建物が全部滅失した場合の特例

建物一棟が全部滅失した場合、区分所有関係は消滅し、区分所有法は適用されなくなり(区分3などを参照)、マンション敷地は民法の共有に戻ります。つまり、敷地の売却や再築には元区分所有者全員の同意が必要になる結果、マンション再建等は事実上不可能です【1】。さらに、土地の共有持分の放棄(民255)や共有物分割請求(民256)ができるようになる結果、マンション底地の権利関係は複雑になります。

そこで、阪神・淡路大震災を機に「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災区分所有法)」が制定されました。この法律は、大規模災害で建物が全部滅失した場合でも、民法の共有に戻るのではなく、「多数決(5分の4)」によって敷地の売却や建物の再建を決めることができる特例を定めています。

なお、被災区分所有法の適用を受けるためには、政令による指定を受ける必要があり、これまでに阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震に指定(適用)されました。

 

【1】全員ということは、所在不明者、海外居住者、死亡は確実だが相続人が不明、認知症の方なども含みます。

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参考文献

  • 稻本洋之助・鎌野邦樹『コンメンタール マンション区分所有法[第3版]』日本評論社/2015年
  • 日本司法書士会連合会法制審議会区分所有法制部会対応プロジェクトチーム「『区分所有法改正でこう変わる!』Q&A」令和7年1月