マンションの運営について何かを決定する場合、「誰が」その決定を行うのかは重要です。

理事長が一人で決めていた事項が、実は区分所有者の同意が必要な事項だったとしたら、大問題です。

この記事では、

  • まず❶マンション運営に関する主な決議事項(議案)と、その議決要件について、
  • 次に➋議決要件を規約でどのように変更(緩和、加重)できるかについて、

司法書士が解説しています。

もくじ
  1. 議案とその議決要件
  2. 規約による議決要件変更
  3. 人気の関連ページ
  4. 参考文献

議案とその議決要件


マンションに関して何かを決定する場合、議決の要件には、次の種類があります。

  • 区分所有者全員の同意
  • 区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数(特別決議)
  • 区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数(特別決議)
  • 区分所有者および議決権の各過半数(普通決議):法律や規約に別段の定めがない場合の原則的な議決要件です(区分39Ⅰ)。
  • 一定の少数区分所有者でできる
  • 各区分所有者が単独でできる

可決の条件が厳しいものから順に掲載していきます。

※ 令和8年4月1日区分所有法の改正で議決要件の緩和が行われますが、下表では未反映です。

議案の種類

議決等の要件

  1. 招集手続を経ずに集会を開催する場合(区分36)
  2. 集会を開催しない書面決議や電磁的方法による決議での合意(区分45)
区分所有者全員の同意
  1. 建替え決議(区分62)【1】
  2. 建物敷地の一括売却決議(改正区分64-6)
  3. 建物取壊し敷地売却決議(改正区分64-7)
  4. 建物取壊し決議(改正区分64-8)
  5. 再建決議(改正区分75)
  6. 敷地売却決議(改正区分76)
  7. 一棟リノベーション決議(改正区分64-5)
  8. 団地内建物の建替え決議(区分69ⅠⅦ)
  9. 団地内建物の一括建替え決議(区分70Ⅰ)

区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数(特別決議)

  1. 共用部分の重大な変更(形状または効用の著しい変更を伴うもの)(区分17Ⅰ)。共用部分の変更が特定の区分所有者の権利に「特別の影響」を及ぼすときは、その者の承諾を得る必要があります(区分17Ⅱ)。【2】
  2. 区分所有者の共有に属する敷地または附属建物の変更(区分21→区分17Ⅰ)
  3. 規約の設定・変更・廃止。規約の設定・変更・廃止が特定の区分所有者の権利に「特別の影響」を及ぼすときは、その者の承諾を得る必要があります(区分31Ⅰ)。
  4. 管理組合法人の成立(区分47Ⅰ)
  5. 管理組合法人の解散(区分55Ⅱ)
  6. 共同利益違反者に対する使用禁止の訴え(区分58Ⅱ)
  7. 共同利益違反者に対する競売請求の訴え(区分59Ⅱ→区分58Ⅱ)
  8. 共同利益違反の占有者に対する使用禁止の訴え(区分60Ⅱ→区分58Ⅱ)
  9. 大規模一部滅失(建物の価格の2分の1超が滅失)の場合の復旧決議(改正前区分61Ⅴ)
  10. 団地内の区分所有建物につき団地の規約を定めることについての各棟の承認(区分68Ⅰ②)

区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数(特別決議)

  1. 共用部分の管理行為(保存行為および重大な変更を除く)(区分18)
  2. 共用部分の軽微な変更(形状または効用の著しい変更を伴わないもの)(区分17Ⅰ括弧書き)
  3. 区分所有者の共有に属する敷地または附属建物の管理(区分21→区分18Ⅰ)
  4. 管理者の選任および解任(区分25Ⅰ)
  5. 管理者に対する訴訟追行権の授権(区分26Ⅳ)
  6. 管理者がいない場合の記録保管者の選任(区分33Ⅰただし書、区分42Ⅴ、区分45Ⅳ)
  7. 集会における議長の選任(区分41)
  8. 管理組合法人の理事・監事の選任・解任(区分49Ⅷ、区分50Ⅳ→区分25Ⅰ)
  9. 管理組合法人の代表理事の選任(区分49Ⅴ)
  10. 管理組合法人の理事の共同代表の定め(区分49Ⅴ)
  11. 管理組合法人の事務(区分52Ⅰ)
  12. 共同利益違反者に対する違反行為停止、除去、予防の訴え(区分57)
  13. 共同利益違反者に対する57条から60条までの訴訟追行についての管理者等に対する訴訟追行権の授権(区分57ⅢⅣ、区分58Ⅳ、区分59Ⅱ、区分60Ⅱ)
  14. 小規模一部滅失(建物の価格の2分の1以下が滅失)の場合の復旧決議(区分61Ⅲ)
  15. 大規模一部滅失(建物の価格の2分の1超が滅失)の場合の復旧決議(改正区分61Ⅴ)

区分所有者および議決権の各過半数

(普通決議)

  1. 区分所有者の5分の1以上かつ議決権の5分の1以上(規約で減ずることも可能)を有する者は、管理者に対し集会の招集を請求できます(区分34Ⅲ)。
一定の少数区分所有者でできる
  1. 共用部分の保存行為(清掃や補修など)(区分18Ⅰただし書)
  2. 小規模一部滅失(建物の価格の2分の1以下が滅失)の場合、滅失した共用部分や自己の専有部分の復旧(区分61Ⅰ)
各区分所有者ができる

【1】下記いずれかの事由がある場合には、多数決割合を3/4に引き下げる(改正区分所有法62Ⅱ)

  1. 耐震性の不足
  2. 火災に対する安全性の不足
  3. 外壁等の剝落により周辺に危害を生ずるおそれ
  4. 給排水管等の腐食により著しく衛生上有害となるおそれ
  5. バリアフリー基準への不適合

【2】下記いずれかの事由がある場合には、多数決割合を2/3に引き下げる(改正区分所有法17Ⅴ)。

  1. 共用部分の設置・保存の瑕疵により権利侵害のおそれがある場合
    例)倒壊のおそれある立体駐車場を取り壊して平置きの駐車場にする。
  2. バリアフリー化のために必要な場合
    例)階段しかない5階建てマンションにエレベーターを設置する。

規約による議決要件変更


区分所有法の集会における議決要件の規約による加重(厳格化)および緩和の可否は、議案の種類(普通決議か特別決議か)によって異なります。

 

普通決議事項(区分39)

規約によって加重・緩和ともに可能です。

  • 加重の例:特定の重要事項(例:小規模一部滅失の復旧)について、各3分の2以上の賛成を要すると定めることなどが考えられます(後掲『コンメンタール』231頁参照)。
  • 緩和の例:マンション標準管理規約47条では、総会の成立要件(議決権総数の半数以上を有する組合員の出席)を設けたうえ、議決要件を「出席組合員の議決権の過半数」としています。区分所有者の頭数要件を排除し、議決権のみによる決議を認める緩和例です。

 

特別決議事項

  加重 緩和
原則 可能【0】 法律に別段の定めがない限り、不可【1】
共用部分の変更(区分17Ⅰ) 不可 規約で「区分所有者の定数(頭数)(4分の3)」のみ、「過半数」まで減ずる(緩和する)ことが認められています。「議決権の定数(4分の3)」を緩和することはできません(17Ⅰ) 。【2】
規約の設定・変更・廃止(区分31Ⅰ) 不可【3】 不可【3】

【0】議決要件を加重する(団体的拘束を緩める)ことは許される。各区分所有者が基本として有する所有者としての自由を本法に定める以上に制限することにならないからである(後掲『コンメンタール』196頁)。

【1】議決要件を緩和する(団体的拘束を強める)ことは原則として許されない(後掲『コンメンタール』111頁、196頁)。

【2】特別決議の要件緩和が原則として許されない【1】ことの例外です。

【3】絶対的強行規定であり、規約によって定数を増大させることも減少させることもできません(後掲『コンメンタール』196頁)。

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参考文献


この記事を執筆するために、下記書籍等を参考にしました。

文中で引用する場合には、太字部分とページ番号のみを記載しています。

  • 稻本洋之助 鎌野邦樹『コンメンタール マンション区分所有法 [第3版]』日本評論社/2015年
  • 平野裕之『物権法[第2版]』日本評論社/2022年
  • 石田剛 (一橋大学教授),武川幸嗣 (慶應義塾大学教授),占部洋之 (関西大学教授),田髙寛貴 (慶應義塾大学教授),秋山靖浩 (早稲田大学教授)/著『民法Ⅱ 物権 第4版 LEGAL QUEST』有斐閣/2022年
  • 丸山英氣『法律学講座 区分所有法〔第2版〕』信山社/2023年