企業間の契約書作成を承ることが多い司法書士ですが、契約書を納品するときには「日付は空欄」でお渡しすることが多いです。何もお伝えせずにお渡しすると、日付の記入をお忘れになったり、遡った日付を記入してしまうこともあるようです。
また、司法書士として執務していると、日付が空欄になっている契約書が結構な頻度で現れて、対応に苦慮します。
この記事では「契約書末尾の日付」について、解説しています。
| もくじ | |
|
まず、契約書作成の目的から確認しておきましょう。
契約書は主に、5つの目的で作成されます。
1.契約書末尾の日付は、契約がいつ締結された(成立した=契約の始期)のかを明らかにするものです。
すでにご説明した「契約書作成の目的」から考えても、契約成立日はとても重要です。
例えば、法令の施行日は「○年○月○日より施行する」などと定められます。契約成立日が1日でもズレれば、その契約が適法か違法かにすら影響を与えることもあり得ます。
ところが、契約は口約束でも成立するため「契約締結日(契約成立日)」と「契約書作成日」は、ずれることもあります。
実務上は、署名押印した日「契約書作成日」を記載するのが通常です。署名押印する際には、目の前にある契約書が、事前の打ち合わせ内容とに違いがないか確認しているので、契約締結日(契約成立日=効力発生日=契約の各条項に拘束される日)と考えて支障ありません。
契約書の条項で別途「効力発生日」を定めていない場合には、契約書末尾の日付が、契約の効力発生日として推定されます(後掲『業務委託契約書』126頁など)。
2.契約の有効期間がいつまでか(契約の終期)を決める場合もあります。
例えば、契約書本文で有効期間について「本契約締結日から1年間有効」と定めた場合です。
契約書が特定の日付までに存在したことを証明し、証拠としての信頼性を高めるために、公証役場で「確定日付」を取得する方法もあります。
契約当事者が一堂に会して署名押印する場合には、その日を記入すれば、問題ありません。
遠方当事者同士の契約の場合には、当事者が署名押印する日がズレますので、実務上は、最後に押印する当事者が、その署名押印した日(契約書作成日)を記入し、その日をもって、契約の効力発生日
とすることが多いです。
気になるときには、特約等として効力発生日を記入します。
契約書は日付を記入して初めて完成しますので、日付空欄のまま置いておかないように、ご注意ください。
<日付空欄のリスク>
日付が記載されていない場合、次のようなリスクがあります。
<日付記載漏れの防止策>
実務上、取引が先行し契約書作成が後追いになった場合などに行われることもありますが、多くのリスクを伴うため、避けるべきです。
| 過去 | ← | 現在 |
|
「合意成立日よりも前の日付」を記入する。 |
「実質的に合意に至った日付」を記入する。 | 「署名した日」を記入する。 |
|
虚偽記載であり、許されない。 <違法なバックデート> |
<ギリセーフなバックデート> | <原則> |
<バックデートのリスク>
<適切な対応>
契約の効力を遡及させたい場合は、締結日を操作するのではなく、契約条項により効力発生日を遡及させる(遡及適用)ことが適切です(後掲『企業法務1年目』81頁)。
具体的には、契約書の末尾の日付欄には、全当事者の署名押印が完了した、実際の作成日を記入します。そして、契約書本文中に次のような条項を入れます。
| 第○条(遡及適用) | |
| 本契約は、その締結日にかかわらず、〇年〇月〇日に遡って適用される。 | |
遡る時間的な範囲、物的な範囲を具体的に定めた記載例も見られます。この方法であれば、契約書の証拠能力を損なうことなく、取引の実態に合わせて契約内容を適用することが可能です(後掲『実務必携』93頁参照 )。
| 第○条(遡及的効力) | |
| 甲(売主)及び乙(買主)は、○年○月○日以降に甲乙間で既になされた本件商品を目的とする取引についても、格別の合意のない限り本契約を遡及的に適用することを確認する。 | |
契約締結日よりも後の日を効力発生日として設定することは、一般的です。
ただし、契約書末尾の日付欄に未来の日を入力するのは、契約の効力を争われるリスクがあります。
署名日欄に記載する日付は、あくまで署名した日にして、契約書本文中に効力発生日や有効期間を規定するようにします。
たとえば、「本契約の有効期間は、2024年1月1日から2024年12月31日までとする。」との条項を定めた契約書を、2023年12月20日に締結するような場合です(後掲『企業法務1年目』81頁参照)。
ここからは「過去に締結した契約書を探し出したところ、日付が空欄になっていた場合、どうすれば良いか」について、解説します。
契約書原本は、契約当事者数と同じ通数が作成するのが通常です。当方の手許にある契約書の日付が空欄であったとしても、相手方が持っている契約書には日付が入っていることもあります。
そこで、契約相手に何年何月何日を記入してあるのか確認することもあります。
契約相手に教えてもらった契約日をそのまま記入するのではなく、整合性も確認したうえで、記入するようにしましょう。
企業・事業者向けサービス
トラブル解決サービス(簡裁訴訟代理、裁判書類作成)
