知的財産権侵害への基本的な対応を解説したページです。

  1. 自社の権利が侵害されたとき、どのような行為が違法とされているかが分かります。
  2. 自社の権利が侵害されたとき、どのような解決方法があるのかが分かります。

本記事のテーマ「知的財産権」は、研究・開発をしている企業に限らず、すべての企業にとって大切な権利です。知的財産権の専門家は、弁理士と弁護士です。 

 

一方、当グループの司法書士は、多くの中小零細企業やスタートアップと接点を持っています。関与先企業から、私たちに対して「自社製品の模造品が出回っている」などという相談が持ち掛けられた場合には、しっかりと適切な弁護士や弁理士にお繋ぎします。

もくじ
  1. 知的財産権侵害の類型
    1. 模倣品の製造・販売(直接侵害)
    2. 間接侵害の類型
    3. 不正競争防止法の定める侵害行為の類型
  2. 模倣品放置のデメリット
  3. 模倣品の発生を抑止する「予防措置」
  4. 模倣品を発見したときの「対応措置」
  5. 模倣品対策まとめ【知財防衛チェックリスト】
  6. 当グループにおける知財保護の取組み
  7. 人気の関連ページ
  8. 参考文献等

〔凡例〕この記事では、次の法令が出てきます。法令名が長いときは、次のとおり略記します。

  • 著:著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
  • 特:特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)
  • 実:実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)
  • 意:意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)
  • 商標:商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)
  • 不正2Ⅰ①:不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第2条第1項第1号

知的財産権侵害の類型


全体像

知的財産権に対する侵害 直接侵害・・・最たる例が「模倣品の製造・販売」
間接侵害・・・侵害と「みなす」ことで、知財を保護 
不正競争防止法上の侵害・・・登録されていない知財も保護

模倣品の製造・販売(直接侵害)

模倣品の製造・販売は、正当な権限又は理由なく、他人の知的財産権を利用する「直接侵害」の典型的な例です。

この記事で詳しく解説します。

 

間接侵害の類型

知的財産権の侵害行為には、正当な権限なく権利の対象を利用する「直接侵害」だけでなく、本来の侵害行為には当たらないものの、侵害の実質的な予備行為や幇助行為を侵害とみなす「みなし侵害(擬制侵害・間接侵害)」が各法令(著作権法、商標法、意匠法、特許法等)で定められています。

下記は、間接侵害の例です。まだまだ他にもありますので、詳細は法令をご覧ください。

  間接侵害の例
  法律

侵害行為

の類型

行為の対象

(物・サービス等)

目的・主観的要素 注意点

著作権法113Ⅰ① 輸入 国内において作成したとしたならば著作者人格権、著作権等の侵害となるべき行為によつて作成された物 国内において頒布する目的 輸入時において判断される。
著作権法113Ⅰ②

頒布、頒布目的の所持、頒布する旨申出

(業として)輸出

(業として輸出目的の)所持

著作者人格権、著作権等を侵害する行為によつて作成された物(輸入に係る物を含む) 情を知つて  
著作権法113Ⅺ

(著作者の名誉又は声望を害する方法により)その著作物を利用する行為

著作者の名誉又は声望を害する方法により(その著作物を利用する行為) 不要【1】 著作者人格権を侵害する行為とみなす。

特許法101①

生産、譲渡等、輸入

譲渡等の申出

特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産にのみ用いる物 業として 専用品型間接侵害
特許法101②

生産、譲渡等、輸入

譲渡等の申出 

特許が物の発明についてされている場合において、

その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く)であつて、その発明による課題の解決に不可欠なもの

その発明が特許発明であること、およびその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、

業として

多機能品型間接侵害

特許法101③

(業として)譲渡等

(輸出のため)に所持

特許が物の発明についてされている場合において、その物 業として 模倣品拡散助長型間接侵害
特許法101④

生産、譲渡等、輸入

譲渡等の申出

特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用にのみ用いる物 業として 専用品型間接侵害
特許法101⑤

生産、譲渡等、輸入

譲渡等の申出

特許が方法の発明についてされている場合において、

その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く)であつて、その発明による課題の解決に不可欠なもの

その発明が特許発明であること、およびその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、

業として

多機能品型間接侵害
特許法101⑥

譲渡等

輸出のために所持

特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物 業として 模倣品拡散助長型間接侵害

実用新案法28①

生産、譲渡等、輸入

譲渡等の申出

登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物 業として  譲渡等には電気通信回線を通じた提供(プログラム等の場合)を含む。 

意匠法38①

製造、譲渡、貸渡し、輸入

譲渡、貸渡しの申出

登録意匠等に係る物品の製造にのみ用いる物品、またはプログラム等 業として  プログラム等の作成や電気通信回線を通じた提供を含む。

商標法37① 使用 指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用、または類似商品・類似役務についての登録商標等の使用 【2】 直接侵害に近いが、第37条は「侵害とみなす行為」として規定。 
商標法37② 所持  指定商品、指定商品・指定役務に類似する商品であつて、その商品又は包装に登録商標・類似商標を付したもの 譲渡、引渡し、または輸出のため 侵害の予備的行為の規制
商標法37⑧ 製造、譲渡、引渡し、輸入 登録商標・類似商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物 業として 商標表示物製造用具の製造・譲渡等。

【1】著作者の名誉または声望を害する方法による著作物の利用(著作権法113Ⅺ)の成立において、侵害者の目的や主観(「情を知って」等の要件)は明文上必要とされていません。

裁判例(天皇似顔絵事件、東京地判平25・7・16裁判所ウェブサイト)においても、当該利用行為が著作者の名誉または声望を害するか否かは、一般人の普通の注意と読み方を基準として「被告の意図にかかわりなく」判断されるべきであると示されています。

したがって、侵害者に特定の目的や主観的な意図がなくても、客観的に著作者の社会的評価を低下させる方法で利用した場合には、本条の侵害とみなされます。

【2】行為の成立には、原則として侵害者側の特定の目的や主観は必要とされません。

民事上の差止請求については、侵害者の故意や過失の有無を問わずに成立し、また、実際に出所の混同が生じているか否かにかかわらず商標権侵害が成立します。

ただし、民事上の損害賠償を請求する場合には、侵害者に故意または過失があることが要件となります。また、37条2号等に規定される侵害の予備的な行為(所持等)については、「譲渡・引渡しの目的」といった侵害者の主観的要件が求められますが、1号の行為自体にはそのような目的要件は規定されていません。

なお、刑事上の責任を問う場合には、対象が登録商標であることの認識や、商標が「似ている」という程度の認識(故意)が必要となります。

不正競争防止法の定める侵害行為の類型

特許や商標の登録の有無にかかわらず、不正競争防止法によって、以下の行為が禁止されています。

  説明 民事【1】 刑事【2】

周知表示混同惹起行為

(不正2Ⅰ①)

他人の周知な表示と混同を生じさせる行為
著名表示冒用行為(2Ⅰ②) 他人の著名な表示を無断で使用する行為
形態模倣商品の提供行為(2Ⅰ③) 他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡、貸渡し、展示、輸出、輸入、インターネットで提供
営業秘密に関する不正行為(2Ⅰ④~⑩) 他人の営業秘密の窃取・不正利用
限定提供データの不正取得等行為(2Ⅰ⑪~⑯) 限定提供データ(ビッグデータ・2Ⅶ)の不正取得 ×
技術的制限手段回避装置提供行為(2Ⅰ⑰⑱) コピー制限などの「技術的制限手段」を回避する装置やプログラムの提供
ドメイン名の不正取得等(2Ⅰ⑲)

ドメイン名とは

URLの場合:https://の後

メールアドレスの場合:@の後

×
商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示(2Ⅰ⑳) 商品・役務又はその広告等に、その原産地、品質・質、内容等について誤認させるような表示をする行為、又はその表示をした商品を譲渡等する行為
信用毀損行為(2Ⅰ㉑) 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為 ×

代理人等の商標冒用

(2Ⅰ㉒)

パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用等する行為

×

【1】下記のような民事的措置が規定されています。

  • 差止請求権(不正3)
  • 損害賠償請求権(不正4)
  • 損害額・不正使用の推定等(不正5等)
  • 書類提出命令(不正7)
  • 営業秘密の民事訴訟法上の保護(秘密保持命令、訴訟記録閲覧制限、非公開審理)(不正10等)
  • 信用回復の措置(不正14)

【2】下記のような刑事的措置が規定されています。

  • 罰則(不正21)
    • 営業秘密侵害罪:十年以下の拘禁刑若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科
    • それ以外:五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科
  • 両罰規定(不正22)
    • 法人に対して最高10億円の罰金

模倣品放置のデメリット


ここからは、模造品対策について、ご説明して参ります。

まずは、模造品放置のデメリットは、次の通りです。

  • 模造品が購入される結果、売上減少、成長鈍化が生じます。
  • 模倣品の品質が悪いと、正規品の評価が落ちることもあります。

これらの被害を生じさせたないためには、次の対策が必要です。

  • 模倣品発生の「予防措置」
  • 模倣品出現時の「適切かつ迅速な措置」

模倣品の発生を抑止する「予防措置」


予防対策としては、次のようなものが考えられます。

  1. 登録できるものは、登録する。
    登録できる権利については、下表を参照ください。
    模倣品対策としては、複数の権利を組み合わせて登録することが有効とされます。
  2. 出願した場合、(出願中)と表示する。
    模倣品を製造発売しても、無駄だぞと警告しておきます。
  3. 登録された場合、Ⓡを表示する。
    Ⓡは、「登録された」という意味の「registered」の頭文字をとったものです。
  4. 著作物には、Ⓒ(C)を表示する。
    著作権は、登録することなく保護されますが、敢えてⒸ(C)などと表示しておきます。
    Ⓒは、「Copyright(コピーライト)」の頭文字で、著作物(書籍、写真、動画など)が著作権により保護されていることを示し、無断複製や改変の禁止を主張する意味です。
  5. 模倣品の早期発見に努める。
    ユーザーからの「情報提供」「模倣品を正規品と見誤ったクレーム」などから模倣品発見に繋がることも多いです。
    業界内での情報共有も有効です。
    ECサイトや流通チャンネルを定期的にモニタリングしておくことも重要です。
    保護対象 権利発生

登録に

新規性

存続期間
著作権

書籍、写真、動画、音楽、映画、

絵画など

創ったとき【1】  

創ったとき

~著作者死後70年

特許権 発明 登録 必要【2】 出願~20年
実用新案権 特許よりも水準の低い発明 登録

必要【2】

出願~10年
意匠権 デザイン 登録 必要【2】 登録~20年
商標権 商品やサービスの名称 登録 不要

登録~20年。

何度でも更新可能

【1】著作権は、著作物が創作されたときに発生します(登録不要で発生します。)が、登録することも可能です。

【2】出願する権利を有する方ご自身も、発表や販売よりも先に、出願しておく必要があります。

出願前に発表や販売してしまった場合は、改良やバージョンアップした際に、出願を検討します。

模倣品を発見したときの「対応措置」


模倣品を発見したときには、「適切かつ迅速」に下記のような措置をとります。

 

模造品の発見

模造品そのものの入手、提供元に関する情報の入手

模造品そのものを入手して、自社の正規品と比較します。

製造元、発売元、プラットフォーマーなど関係する当事者をピックアップします。

検討

  • 自社のいかなる権利を侵害されているのか?
  • いかなる権利行使が可能か?
  • どのような方法で権利行使可能か?
  • 誰に対して権利行使するのが最も効果的か?

などを検討します。

警告書の送付と交渉

調査検討を完了し、理論武装したうえで、警告書を発出します。

警告書では、次のような項目を記載するのが通常です。

  • 侵害された自社の権利
  • 侵害の理由
  • 製造や販売の即時中止申入れ
  • (場合によって)損害賠償請求
  • (場合によって)誓約書の差入

その後の対応

警告やその後の交渉でも、相手方が譲歩しない場合には、次のような方法(場合によっては複数)を行います。

訴訟 仮処分 刑事告訴 税関へ輸入差止申立  

○侵害の判断が困難なときに利用する。

×仮処分より印紙が高い。

×証明を要する。

×審理に長期を要する。

○損害賠償の請求もできる。

○侵害が明白なときに利用する。

○訴訟より印紙が安い。

○疎明で足りる。

○審理が早い。

○仮処分決定は直ちに執行可能。

○不服申立されても執行停止がない。

×模倣品の売上次第では担保金が高額。

×損害賠償の請求ができない。

知的財産権侵害には、厳しい刑事罰もある。

(懲役刑や法人両罰規定など)

 

ただし、検挙件数の多い侵害類型(商標権侵害、著作権侵害、不正競争防止法違反)で、使うのが効果的。

反対に、特許権侵害、実用新案権侵害、意匠権侵害は、検挙件数が少ない。

<模倣品が輸入品>

知的財産権を侵害している模倣品の輸入は、関税法が禁じています(関税法69-11Ⅰ)。

そこで、税関に対して、輸入差止め申立を行います。

 

プレスリリースはどうか?

原則 裁判所の判断を受ける前に、模倣品である旨や自社権利の侵害である旨をプレスリリースすることは、信用毀損で訴えられる可能性(不正競争2Ⅰ⑳)があるため、止めるべきです。
模倣品の安全性に問題がある場合

安全性に問題があること、商品の見分け方等のみを伝えます。

模倣品である旨や、自社権利の侵害である旨を伝えると、信用毀損で訴えられる可能性(不正競争2Ⅰ⑳)があるため、止めるべきです。

模倣品対策まとめ【知財防衛チェックリスト】


経営陣が直ちに確認すべき【知財防衛チェックリスト】は次の通りです。

  1. □公開前出願の徹底:自社のコア技術やブランド名は、公開する「前」に出願が完了しているか?
  2. □多重防御の構築:単一の特許ではなく、意匠や商標など複数の権利を組み合わせて出願しているか?
  3. □社内検知フロー構築:模倣品発見時に、経営陣に通知がくる体制を構築できているか?
  4. □専門家体制構築:模倣品発見後、即座に動いてくれる専門家がいるか?

当グループにおける知財保護の取組み


当グループが、主に顧問先・取引先の皆様に関して提供する「知的財産保護の取り組み」は次のとおりです。

問題的など 当グループでの対応

中小企業にとって、知的財産をキッチリと登録したり、管理したりするのは、とても重要!

知的財産は、お金になる可能性があるからです!

 

でも、知的財産管理のために、弁理士を常駐させる企業は少ない。。。

【登録機会を逃さない】
  1. 常日頃接する顧問先や関与先の皆様とお話しする中で、
  2. 貴社が登録しておくべき知的財産の種を発見した場合には、
  3. すばやく知的財産の専門家・弁理士におつなぎすることで、
  4. 貴社の知的財産をガッチリ保護し、
  5. 登録機会を逃しません。

M&A、企業法務などでも、知的財産に対するケアは重要。

【契約書精査】

  • 契約書精査では、知的財産にも気を遣います。
知的財産の侵害に対しては、民事上の損害賠償のほか、罰則もございます。

【知的財産侵害】

  • 顧問先や関与先が、知的財産侵害をして、ペナルティーを受けないように、しっかりと見守ります。
どの弁理士に依頼すれば良いか、わからない。

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参考文献


  • 半田正夫・松田政行 編『著作権法コンメンタール3[第2版] 89条~124条、附則、著作権等管理事業法』勁草書房/2015年
  • 小野昌延・三山峻司 編『新・注解 商標法 (下巻)』青林書院/2016年
  • 茶園成樹 (大阪大学教授)/編『商標法 第2版』有斐閣/2018年
  • 茶園成樹 編著 上野達弘 編著『デザイン保護法』勁草書房/2022年
  • 渡辺弘司 監修『図解 最新 知的財産権のしくみと手続きがわかる事典』三修社/2022年
  • 山本飛翔・菅原稔・尾下大介 編著『スタートアップの法律相談 最新青林法律相談シリーズ46』青林書院/2023年/251頁以下
  • 経済産業省『逐条解説 不正競争防止法』2024.4.1
  • 経済産業省『不正競争防止法テキスト』2025.9