合同会社では、その構成員のことを「社員」といい、株式会社の株主と取締役が合体したような地位です。したがって、この記事で「社員」とは、単なる会社員とは異なる意味です。
さて、株式会社では、所有(株主の地位)と経営(取締役の地位)が分離しているため、株主兼取締役の「取締役」が辞める場合でも、その株主兼取締役の「株主の地位」は変動しません。
ところが、合同会社の社員は、株式会社の株主と取締役が合体したような地位ですので、社員が辞める場合には、その社員の出資した分をどうするか等も決めなければなりません。
この記事では、複雑な合同会社社員の退社方法について、解説しています。
| もくじ | |
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〔凡例〕この記事では、次のとおり略記します。
合同会社の社員には、3種類あります。
社員、業務執行社員、代表社員です。
| 意義 | 出資 | 定款への記載 | 登記 | |
| 社員 | 出資し、定款に氏名が記載された人(会604Ⅲ) |
必要 (会578、会604Ⅲ) |
必要 (会576Ⅰ④) |
不要&不可 |
| 業務執行社員 |
社員の中から選ばれる (会591) |
必要 (会591) |
必要 | |
| 代表社員 | 業務執行社員の中から選ばれる(会599Ⅲ) |
△【1】 (会599Ⅲ) |
必要 |
【1】定款に代表社員の氏名を記載してもよいし、互選すると規定してもよい。
社員が退社する方法は、大きく分けて二つあります。
自分から去る方法と、(社員の意思を問わず)追い出される方法です。
| 社員が自分から去る方法 |
任意退社 (会606) |
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| その他 |
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| 社員の意思に関わらず追い出す方法 |
法定退社 (会607) |
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| その他 |
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【1】合同会社は、これらの事由では退社しない旨を定款で定めることができます(会607Ⅱ)。
【2】合同会社において「除名」とは、単に除名を決議すれば、除名できる(強制的に退社させられる)という訳ではありません。後ほど詳しく解説します。
「除名」は、法律用語ですが、法人の種類によって意味が異なる厄介な単語です。
すなわち、下記2種類です。
合同会社では、➊他の社員の過半数の決議を得ると除名の訴えを提起できることになり、そのうえで➋裁判所への請求(勝訴)が必要です(会859)。
決議のみで除名できる法人種類
決議と訴え(勝訴)が必要な法人種類
持分会社以外に、決議と訴え(勝訴)が必要な法人種類を、筆者は、今のところ見つけられていません。
出資持分を他のものに全部譲渡した場合には、合同会社からの資金の流出は生じず、合同会社の資本金の額にも影響しません。したがって、この場合には、債権者保護手続き(会社法627)は不要ですし、資本金の変更登記は不要です。
退社する社員が業務執行社員または代表社員であるときは、これらの退社の登記が必要ですが、定款変更決議は不要です(会社法610:社員退社の場合の定款みなし変更)。
<登記すべき事項>
社員が退社する場合には、持分の払戻しを受けることができます(会社法611Ⅰ)。合同会社が「持分の払戻し」を行う際に、①資本金の額を減少させる場合や、②払戻額が剰余金額を超える場合には、債権者保護手続きが必要です(会社法627)。
退社する社員が業務執行社員または代表社員であるときは、これらの退社の登記が必要ですが、定款変更決議は不要です(会社法610:社員退社の場合の定款みなし変更)。
<登記すべき事項>
合同会社が「出資の払戻し」と「持分の払戻し」を使い分けているのは、会社法626条のタイトル(題名)を見れば明らかです。次のように使い分けています。
| 出資の払戻し | 持分の払戻し | |
| 条文 | 会社法624、626、632~634 | 会609Ⅲ、611、626、635、636 |
| 社員の地位 | 退社しない。 | 退社に伴って行われる。 |
| 払戻対象 |
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| 手続 |
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合同会社の社員が、業務執行社員や代表社員である場合には、業務執行権や代表権のみを無くすことも可能です。
| 自らその立場を辞する |
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| 立場を本人の意思に反して奪う |
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社員の退社に関連する会社法の条文(591、606、607、609、642、845、859~862)をピックアップしました。
| 会社法第591条(業務を執行する社員を定款で定めた場合) | |
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| 会社法第606条(任意退社) | |
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| 会社法第607条(法定退社) | |
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会社法第609条(持分の差押債権者による退社) |
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| 会社法第642条(持分会社の継続) | |
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| 会社法第845条(持分会社の設立の無効又は取消しの判決の効力) | |
| 持分会社の設立の無効又は取消しの訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合において、その無効又は取消しの原因が一部の社員のみにあるときは、他の社員の全員の同意によって、当該持分会社を継続することができる。この場合においては、当該原因がある社員は、退社したものとみなす。 | |
| 会社法第859条(持分会社の社員の除名の訴え) | |
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持分会社の社員(以下この条及び第861条第一号において「対象社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができる。
一 出資の義務を履行しないこと。 二 第594条第1項(第598条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反したこと。 三 業務を執行するに当たって不正の行為をし、又は業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与したこと。 四 持分会社を代表するに当たって不正の行為をし、又は代表権がないのに持分会社を代表して行為をしたこと。 五 前各号に掲げるもののほか、重要な義務を尽くさないこと。 |
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| 会社法第860条(持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え) | |
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持分会社の業務を執行する社員(以下この条及び次条第二号において「対象業務執行社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象業務執行社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象業務執行社員の業務を執行する権利又は代表権の消滅を請求することができる。
一 前条各号に掲げる事由があるとき。 二 持分会社の業務を執行し、又は持分会社を代表することに著しく不適任なとき。 |
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| 会社法第861条(被告) | |
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次の各号に掲げる訴えについては、当該各号に定める者を被告とする。
一 第859条の訴え(次条及び第937条第1項第一号ルにおいて「持分会社の社員の除名の訴え」という。) 対象社員 二 前条の訴え(次条及び第937条第1項第一号ヲにおいて「持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え」という。) 対象業務執行社員 |
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| 会社法第862条(訴えの管轄) | |
| 持分会社の社員の除名の訴え及び持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴えは、当該持分会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。 | |
退社によって資本金が変動しないとき:1か月程度
退社によって資本金が変動するとき:2~3か月程度
合同会社社員の退社の登記は、様々なパターンがあります。
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