合同会社では、その構成員のことを「社員」といい、株式会社の株主と取締役が合体したような地位です。したがって、この記事で「社員」とは、単なる会社員とは異なる意味です。

さて、株式会社では、所有(株主の地位)と経営(取締役の地位)が分離しているため、株主兼取締役の「取締役」が辞める場合でも、その株主兼取締役の「株主の地位」は変動しません。

ところが、合同会社の社員は、株式会社の株主と取締役が合体したような地位ですので、社員が辞める場合には、その社員の出資した分をどうするか等も決めなければなりません。

 

この記事では、複雑な合同会社社員の退社方法について、解説しています。

もくじ
  1. 合同会社の社員の種類
  2. 社員が合同会社を退社する方法
  3. 「除名」とは ー 法人の種類によって意味の異なる法律用語です。
    1. 合同会社における除名
    2. 他の法人における除名
  4. 退社に伴って必要な手続き
    1. 持分を全部譲渡したことによる退社の場合
    2. 退社して、合同会社から持分の払戻しを受ける場合
    3. コラム:「出資の払戻し」と「持分の払戻し」の違い
  5. 業務執行権や代表権のみを無くすこともできます。
  6. 会社法の条文
  7. 標準的な所要時間
  8. 司法書士の報酬・費用
  9. 人気の関連ページ
  10. 参考文献

〔凡例〕この記事では、次のとおり略記します。

  • 会607Ⅰ①:会社法(平成十七年法律第八十六号)第607条第1項第1号
  • 一般法人法:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)
  • 医療法:医療法(昭和二十三年法律第二百五号)
  • 非営利法:特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)
  • 中小協法:中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)

合同会社の社員の種類


合同会社の社員には、3種類あります。

社員、業務執行社員、代表社員です。

  意義 出資 定款への記載 登記
社員 出資し、定款に氏名が記載された人(会604Ⅲ)

必要

(会578、会604Ⅲ)

必要

(会576Ⅰ④)

不要&不可
業務執行社員

社員の中から選ばれる

(会591)

 

必要

(会591)

必要
代表社員 業務執行社員の中から選ばれる(会599Ⅲ)  

△【1】

(会599Ⅲ)

必要

【1】定款に代表社員の氏名を記載してもよいし、互選すると規定してもよい。

社員が合同会社を退社する方法


社員が退社する方法は、大きく分けて二つあります。

自分から去る方法と、(社員の意思を問わず)追い出される方法です。

社員が自分から去る方法

任意退社

(会606)

  1. やむを得ない事由があるとき=いつでも退社できる。
  2. 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合=6か月前に予告して、事業年度の終了の時に退社できる。
  3. ある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合=6か月前に予告して、事業年度の終了の時に退社できる。
その他
  1. 持分の全部譲渡による法的効果としての退社
社員の意思に関わらず追い出す方法

法定退社

(会607)

  1. 定款で定めた事由の発生(会607Ⅰ①)
  2. 総社員の同意(会607Ⅰ②)
  3. 死亡(会607Ⅰ③)
  4. 合併により当該法人である社員が消滅する場合(会607Ⅰ④)
  5. 破産手続開始の決定(会607Ⅰ⑤)【1】
  6. 解散(会607Ⅰ⑥)【1】
  7. 後見開始の審判を受けたこと(会607Ⅰ⑦)【1】
  8. 除名(会607Ⅰ⑧)【2】
その他
  1. 社員持分を差し押さえた債権者による退社(会609Ⅰ)
  2. 持分会社の会社継続に同意しなかった社員の退社(会642Ⅱ)
  3. 設立無効または設立取消の場合の原因社員の退社(会845)

【1】合同会社は、これらの事由では退社しない旨を定款で定めることができます(会607Ⅱ)。

【2】合同会社において「除名」とは、単に除名を決議すれば、除名できる(強制的に退社させられる)という訳ではありません。後ほど詳しく解説します。

「除名」とは

―法人の種類によって意味の異なる法律用語です。


「除名」は、法律用語ですが、法人の種類によって意味が異なる厄介な単語です。

すなわち、下記2種類です。

  1. 「除名」を社員総会などで決議すれば、除名できる法人の種類
  2. 「除名の訴え提起」の決議ののち、訴えて勝訴判決を得てはじめて除名できる法人の種類

 

合同会社における「除名」

合同会社では、➊他の社員の過半数の決議を得ると除名の訴えを提起できることになり、そのうえで➋裁判所への請求(勝訴)が必要です(会859)。

 

他の法人における「除名」

決議のみで除名できる法人種類

  1. 一般社団法人:正当な事由がある場合に限り、社員総会の決議によって社員を除名できます(一般法人法30)。
  2. 医療法人社団:社員たる資格の得喪に関する規定は、定款の必要的記載事項です(医療法44Ⅱ⑧八)。社員の除名手続きは法律で具体的に定められておらず、定款の規定によります(後掲『〔改訂版〕各種法人関係 議事録モデル文例集』169頁)。
  3. 特定非営利活動法人:社員の資格の得喪に関する事項は、定款の必要的記載事項です(非営利11Ⅰ⑤)。社員除名の決議については、法定されておらず定款で定足数や議決の定めることとなります(後掲『〔改訂版〕各種法人関係 議事録モデル文例集』393頁)。
  4. 事業協同組合、事業協同小組合、信用協同組合、協同組合連合会、企業組合:一定の事由がある場合に限り、総会の決議によって組合員を除名することができます(中小協法19Ⅰ③)。
  5. 民法上の組合:正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって除名できます(民法680)。

 

決議と訴え(勝訴)が必要な法人種類

  1. 持分会社(合名会社・合資会社・合同会社):社員を除名するには、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって裁判所に除名を請求しなければなりません(会859)。この除名手続きは訴訟として規定されており、裁判所の関与が必須です。

持分会社以外に、決議と訴え(勝訴)が必要な法人種類を、筆者は、今のところ見つけられていません。

退社に伴って必要な手続き


持分を全部譲渡したことによる退社の場合

出資持分を他のものに全部譲渡した場合には、合同会社からの資金の流出は生じず、合同会社の資本金の額にも影響しません。したがって、この場合には、債権者保護手続き(会社法627)は不要ですし、資本金の変更登記は不要です。

退社する社員が業務執行社員または代表社員であるときは、これらの退社の登記が必要ですが、定款変更決議は不要です(会社法610:社員退社の場合の定款みなし変更)。

<登記すべき事項>

  • 退社する社員が業務執行社員または代表社員であるときは、これらの退社の登記。
    • 持分の譲渡契約書
    • 他の社員全員の同意書

 

退社して、合同会社から持分の払戻しを受ける場合

社員が退社する場合には、持分の払戻しを受けることができます(会社法611Ⅰ)。合同会社が「持分の払戻し」を行う際に、①資本金の額を減少させる場合や、②払戻額が剰余金額を超える場合には、債権者保護手続きが必要です(会社法627)。

退社する社員が業務執行社員または代表社員であるときは、これらの退社の登記が必要ですが、定款変更決議は不要です(会社法610:社員退社の場合の定款みなし変更)。

<登記すべき事項>

  • 退社する社員に持分の払戻しをしたことにより資本金の額が減少したときは、その旨の登記。
    • 減少する資本金の額について業務執行社員の過半数の一致を証する書面
    • 債権者保護手続関係書類
    • 資本金の額の計上証明書
  • 退社する社員が業務執行社員または代表社員であるときは、これらの退社の登記。

 

コラム:「出資の払戻し」と「持分の払戻し」の違い

合同会社が「出資の払戻し」と「持分の払戻し」を使い分けているのは、会社法626条のタイトル(題名)を見れば明らかです。次のように使い分けています。

  出資の払戻し 持分の払戻し
条文 会社法624、626、632~634 会609Ⅲ、611、626、635、636
社員の地位 退社しない。 退社に伴って行われる。
払戻対象
  • 社員が既に出資として払込みまたは給付した財産(資本金および資本剰余金に計上されている額)に限定される。
  • 利益剰余金から行うことはできない(会社計算規則32Ⅱただし書)。
  • 退社社員の出資額に加えて、その社員に帰属する損益額(利益剰余金を含む)の合計額が対象
手続
  • 社員の出資の価額を減少する定款変更が必要。

 

  • ①払戻額が剰余金額(資本剰余金と利益剰余金の合計額)を超える場合や、②資本金の額を減少させる場合には債権者保護手続が必要。
  • 資本金の額の変更登記が必要。

業務執行権や代表権のみを無くすこともできます。


合同会社の社員が、業務執行社員や代表社員である場合には、業務執行権や代表権のみを無くすことも可能です。

自らその立場を辞する
  • 業務執行社員や代表社員が自らその立場を辞することを「辞任」といいます(会591Ⅳ)。
立場を本人の意思に反して奪う 
  • 「解任」業務執行社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任できます(会591Ⅴ)。
  • 「業務執行権の消滅請求」「代表権の消滅請求」は、①対象業務執行社員(対象代表社員)以外の社員の過半数の決議に基づき、②訴え(勝訴)をもって裁判所に消滅請求をしなければなりません(会860)。

会社法の条文


社員の退社に関連する会社法の条文(591、606、607、609、642、845、859~862)をピックアップしました。

 

会社法第591条(業務を執行する社員を定款で定めた場合)
 
  1. 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決定する。この場合における前条第三項の規定の適用については、同項中「社員」とあるのは、「業務を執行する社員」とする。
  2. (略)
  3. 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、その業務を執行する社員の全員が退社したときは、当該定款の定めは、その効力を失う。
  4. 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
  5. 前項の業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる。
  6. 前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
会社法第606条(任意退社)
 
  1. 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、6か月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
  2. 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
  3. 前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。
会社法第607条(法定退社)
 
  1. 社員は、前条、第609条第1項、第642条第2項及び第845条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
    一 定款で定めた事由の発生
    二 総社員の同意
    三 死亡
    四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
    五 破産手続開始の決定
    六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
    七 後見開始の審判を受けたこと。
    八 除名
  2. 持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。

会社法第609条(持分の差押債権者による退社)

 
  1. 社員の持分を差し押さえた債権者は、事業年度の終了時において当該社員を退社させることができる。この場合においては、当該債権者は、6か月前までに持分会社及び当該社員にその予告をしなければならない。
  2. 前項後段の予告は、同項の社員が、同項の債権者に対し、弁済し、又は相当の担保を提供したときは、その効力を失う。
  3. 第1項後段の予告をした同項の債権者は、裁判所に対し、持分の払戻しの請求権の保全に関し必要な処分をすることを申し立てることができる。
会社法第642条(持分会社の継続)
 
  1. 持分会社は、前条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合には、次章の規定による清算が結了するまで、社員の全部又は一部の同意によって、持分会社を継続することができる。
  2. 前項の場合には、持分会社を継続することについて同意しなかった社員は、持分会社が継続することとなった日に、退社する。
会社法第845条(持分会社の設立の無効又は取消しの判決の効力)
  持分会社の設立の無効又は取消しの訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合において、その無効又は取消しの原因が一部の社員のみにあるときは、他の社員の全員の同意によって、当該持分会社を継続することができる。この場合においては、当該原因がある社員は、退社したものとみなす。
会社法第859条(持分会社の社員の除名の訴え) 
  持分会社の社員(以下この条及び第861条第一号において「対象社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができる。

一 出資の義務を履行しないこと。

二 第594条第1項(第598条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反したこと。

三 業務を執行するに当たって不正の行為をし、又は業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与したこと。

四 持分会社を代表するに当たって不正の行為をし、又は代表権がないのに持分会社を代表して行為をしたこと。

五 前各号に掲げるもののほか、重要な義務を尽くさないこと。

会社法第860条(持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え)
  持分会社の業務を執行する社員(以下この条及び次条第二号において「対象業務執行社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象業務執行社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象業務執行社員の業務を執行する権利又は代表権の消滅を請求することができる。

一 前条各号に掲げる事由があるとき。

二 持分会社の業務を執行し、又は持分会社を代表することに著しく不適任なとき。

会社法第861条(被告) 
  次の各号に掲げる訴えについては、当該各号に定める者を被告とする。

一 第859条の訴え(次条及び第937条第1項第一号ルにおいて「持分会社の社員の除名の訴え」という。) 対象社員

二 前条の訴え(次条及び第937条第1項第一号ヲにおいて「持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え」という。) 対象業務執行社員

会社法第862条(訴えの管轄)
  持分会社の社員の除名の訴え及び持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴えは、当該持分会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。

標準的な所要時間


退社によって資本金が変動しないとき:1か月程度

退社によって資本金が変動するとき:2~3か月程度

司法書士の報酬・費用


合同会社社員の退社の登記は、様々なパターンがあります。

貴社のご要望を伺ったうえで、お見積もりを作成いたします。

参考文献


  • 内藤卓司法書士、岡田高紀司法書士、日高啓太郎司法書士『〔改訂版〕各種法人関係 議事録モデル文例集』新日本法規/2017年

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