「行政書士が最初に『行政書士は登記できない』と説明してくれていたら、最初から司法書士に頼んでいました。二重払いになった私は泣き寝入りですか?」

こちらの記事は、市民が間違って「行政書士 相続」などと検索した際に、誤解したまま行政書士に相続を依頼することが無いように、過去にTwitterで発信された司法書士、弁護士の方々の「相続を行政書士に依頼してはいけない理由」をまとめたものです。

一人でも多くの市民の誤解を正せることができれば幸いです。

相続手続は、行政書士ではなく、司法書士にご依頼ください/司法書士バッジ
相続は、行政書士ではなく、司法書士にご相談、ご依頼ください/司法書士バッジ

身近な方がお亡くなりになった(相続が発生した)ときは『行政書士ではなく司法書士にご相談』ください。

名前がよく似ていて、本当に申し訳ないのですが、お間違えのないようにお願いします。

相続手続きに「行政書士」は不要です。

 

この記事では「相続は、行政書士ではなく、司法書士に依頼すべき10の理由」を説明しています。

もくじ
  1. 行政書士の専門は、許認可。
  2. 行政書士が相続でできることは少ないから司法書士が良い。
  3. 不動産のある相続が多いから司法書士が良い。
  4. 相続では裁判所を利用する機会もあるから司法書士が良い。
  5. 行政書士は、途中までしかできないから、最初から司法書士が良い。
  6. 利益相反が禁止されていない行政書士は、遺産分割協議をかき回す可能性があるから相応しくない。
  7. 行政書士は、業際違反が多いから、最初の相談先として相応しくない。
  8. 行政書士は、バックマージンを許容してきた業界だから、最初の相談先として相応しくない。
  9. 銀行も行政書士を相続の専門家として認めないから、司法書士がよい。
  10. 家族にも「相続は、司法書士に相談した方が良い」と言うから、司法書士が良い。
  11. 最後に【行政書士(会)の皆様へお願い】

1■ 行政書士の専門は、許認可。


会社経営者や個人事業主の方はご存じでしょうが、行政書士は本来、行政庁(国、県、市町村)に対する許認可申請のプロです。建設業、運送業、飲食業の許可などを行政書士に依頼される方も多いでしょう。

ただし、これら許認可業務は、いずれも事業者を相手にする仕事です。ところが、開業したばかりの行政書士に仕事を依頼する事業者は多くありません。そこで、行政書士が目をつけたのが、途中までは行政書士でもでき、市民をターゲットにできる相続です。 

2■ 行政書士が相続でできることは少ないから司法書士が良い。


ところが、本来、行政書士は許認可が専門ですので、法務局や裁判所に提出する書類の作成や相談には一切応じることができません。無料でも相談だけでも法律で刑事罰つきで禁止されています。

これらの相談に応じたり、書類作成をするためには、司法書士(又は弁護士)である必要があります。

    行政書士 司法書士

調

戸籍集め 
相続関係説明図の作成 △相続登記に添付するものは不可【1】
法定相続情報の作成

遺産分割協議書の作成 △不動産がないもののみ作成可能【1】
相続登記に関する相談 ×無料でも不可【1】
相続登記申請書の作成 ×無料でも不可【1】
相続登記申請の代理申請 ×無料でも不可【1】

自筆証書遺言の検認申立書の作成・提出

×無料でも不可【2】

失踪宣告申立書の作成・提出

×無料でも不可【2】

不在者財産管理人選任申立書の作成・提出

×無料でも不可【2】

法定後見開始申立書の作成・提出

×無料でも不可【2】

特別代理人選任申立書の作成・提出

×無料でも不可【2】
相続の承認放棄期間の伸長申立書の作成・提出 ×無料でも不可【2】
相続放棄申述書の作成・提出 ×無料でも不可【2】
限定承認申立書の作成・提出 ×無料でも不可【2】
遺言執行者の選任申立書の作成・提出 ×無料でも不可【2】
相続財産清算人選任申立書の作成・提出 ×無料でも不可【2】
遺産分割調停申立書の作成・提出 ×無料でも不可【2】
これら(裁判所に提出する書類)に関する相談 ×無料でも不可【2】

3■ 不動産のある相続が多いから司法書士が良い。


行政書士は「不動産がない相続も多い」と言いますが、これは嘘です。

 

65歳以上の持家率は84.5%

相続が発生するのは、通常、ご高齢者の方々です。

したがって、行政書士が言うように「不動産がない相続も多い」のかどうかは、高齢者の持家率を確認すれば分かります。

下記に引用した「高齢社会白書は、高齢社会対策基本法に基づき、平成8年から毎年政府が国会に提出している年次報告書」ですが、65歳以上の持家率はなんと85.4%です。

内閣府『令和6年版高齢社会白書ー令和5年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況』39頁/最終アクセス250519

 

不動産がない相続はあくまで例外ですので、相続は、最初から司法書士に依頼すべきことをお分かりいただけると思います。

内閣府『令和6年度版 高齢社会白書』39頁「65歳以上の者の8割以上が持家に居住している」
内閣府『令和6年度版 高齢社会白書』39頁「65歳以上の者の8割以上が持家に居住している」

自動車を持ったまま亡くなる方は少ない。

反対に、自動車の名義変更は、行政書士の独占業務であって、司法書士はできません。

ところが、自動車を持ったまま亡くなる方は、とても少ないです(若くでお亡くなりになった方は、お持ちの方も多いです。)。

司法書士は、仮に相続財産が自動車だけの場合には、何もせずに、行政書士に紹介します(自動車の名義変更には裏技もあると、行政書士から聞いています。)。

承継すべき許認可がある相続は少ない。

許認可の相続手続きは、行政書士の独占業務ですが、承継すべき許認可がある相続は、ほとんどありません。相続財産の聞き取りの際には、承継すべき許認可の有無も聞いていますが、25年司法書士をやってきて、数件しかありません。許認可がある相続の場合には、許認可の相続手続きの部分だけ、行政書士にお願いしています。

4■ 相続では裁判所を利用する機会もあるから司法書士が良い。


遺言が出てきただけで、何もできなくなる行政書士

相続手続きを進めるため、通常は、お亡くなりになった方の家捜し(通帳や銀行印探し)をします。家捜し中に、自筆の遺言が出てくることもよくあります。自筆の遺言は家庭裁判所に提出して検認手続きを受けなければなりません。しかしながら、行政書士では、家庭裁判所に提出する書類に関する相談、作成、提出の代行をすることはできません。

この他にも、相続手続きで、裁判所を利用するケースは多いです。下表をご参照ください。

しかし、行政書士は、裁判所提出書類の作成はもとより、相談に応じることもできません。

行政書士が「適切に司法書士や弁護士に紹介している」と言うのも、おかしい話です。途中までしかできないなら、最初から「相続」と銘打って広告集客しなければ良いのです。

    行政書士 司法書士

自筆証書遺言を発見した場合

自筆証書遺言の検認申立書の作成・提出

×無料でも不可【1】

相続人の中に失踪した方がいる場合

失踪宣告申立書の作成・提出

×無料でも不可【1】

相続人の中に行方不明の方がいる場合

不在者財産管理人選任申立書の作成・提出

×無料でも不可【1】

相続人中に判断能力がない方がいる場合

法定後見開始申立書の作成・提出

×無料でも不可【1】
相続人中に未成年者がいる場合において、親権者が未成年者との利害相反により親権を行使できないとき

特別代理人選任申立書の作成・提出

×無料でも不可【1】
相続するか相続放棄するか考える時間を伸ばしたい場合 相続の承認放棄期間の伸長申立書の作成・提出 ×無料でも不可【1】
借金が多いなどの理由で相続を放棄したい場合 相続放棄申述書の作成・提出 ×無料でも不可【1】
借金があるが、プラスの遺産の範囲内であれば、借金を相続しても良いとお考えの場合 限定承認申立書の作成・提出 ×無料でも不可【1】
遺言はあるが、遺言執行者が選任されていない場合において、他の相続人が名義変更に協力しないとき 遺言執行者の選任申立書の作成・提出 ×無料でも不可【1】
相続人がいないとき 相続財産清算人選任申立書の作成・提出 ×無料でも不可【1】
相続人がおらず、自分が被相続人に特別の縁故があるとき  特別縁故者への財産分与の申立書の作成・提出 ×無料でも不可【1】
相続人間で話し合いが成立しなかったとき 遺産分割調停申立書の作成・提出 ×無料でも不可【1】
何をどうすれば良いか分からないとき 裁判所に提出する書類に関する相談 ×無料でも不可【1】

行政書士が失敗した実際の被害事例も報告されている。

借金がある相続を行政書士に紹介した「銀行」と、相続手続きの実績を宣伝しておきながら当該借金を放置した「行政書士」が『悪質商法』として批判されています。

 

「令和5年5月ころのことであるが、突然、予約なしに飛び込みで相談に訪れた初老の女性がいた。話を伺ったところ、夫が亡くなったので口座のある山口銀行の支店に口座解約などの相談に行ったところ、山口銀行の相続担当部署に相談するよう指示された。さらにそこから行政書士法人ORCAを紹介されたので、相続事務処理を行政書士法人ORCAの行政書士に委任した。ところが、夫が独立行政法人住宅金融支援機構に470万1203円の債務を負っており、その旨の通知文書が届いているのだか、どんなに担当行政書士に相談してもとりあってもらえず、他にも負債があったらどうなるのだろうと不安になり、当職の事務所に飛び込んだようである。

話を聞いてみると、この相談者の方も、相続問題なら本来弁護士か司法書士に相談すべきであると思っていて、なぜ山口銀行が行政書士を紹介したのか不審に思ったようである。とはいえ、地元地銀の山口銀行の指示なら間違いはないだろうと考えて行政書士法人ORCA(本店所在地:鳥取県米子市上福原235−9)の行政書士に委任したとのことであった。しかし、担当行政書士が被相続人の債務を黙殺するので・・・」

(弁護士田上尚志先生(島根県)による報告/消費者法ニュース141号)

 

恐らく、この行政書士は、家庭裁判所に対する相続放棄申述という制度があることを知らなかったため、司法書士や弁護士を紹介することに思い至らなかったのでしょう。

司法書士であれば、このような失敗はあり得ません。

相続は、行政書士ではなく、司法書士にご相談・ご依頼ください。

5■ 行政書士は途中までしかできないから、最初から司法書士が良い。


行政書士は、相続手続きの中でも重要な相続登記も、相続放棄など裁判所提出書類の作成も、提出も、これらの相談すらできないことを、説明しました。

司法書士であれば、最初から最後までできますので、最初から司法書士にご依頼ください。

 

5-1■ もう一度、司法書士を探す手間がかかる。

5-2■ 行政書士から司法書士へ引継ぐ手間がかかる。

5-3■ 別に司法書士費用がかかる。

登記申請書に添付する書類は、誰が作成したものであっても、司法書士は必ずチェックします。司法書士には、添付書類もすべてチェックして、登記を完了させる責任があるからです。もちろん、チェックする費用も請求します。

行政書士がその書類を作成した場合、お客様は二重に支払う羽目になります。はっきり申し上げて、行政書士の作成した書類は、できの悪い書類や、そのままでは登記に使えない書類も多いです。行政書士が作成する書類は、登記で使えることを目的としていないからです。逆に、行政書士が登記で使うことを目的に書類を作成すると、司法書士法違反になります。

何より、司法書士であっても、自分で作成した書類をチェックするより、他人の作成した書類をチェックする方が、手間がかかるのです。

<行政書士に最初に相談した場合>   <司法書士に最初に相談した場合>
行政書士   司法書士   司法書士   行政書士
不動産の名寄せ  チェック費用が余分にかかる   不動産の名寄せ ×不要
戸籍の収集 チェック費用が余分にかかる   戸籍の収集 ×不要
相続関係説明図の作成 チェック費用が余分にかかる   相続関係説明図の作成 ×不要
遺産分割協議書の作成 チェック費用が余分にかかる   遺産分割協議書の作成 ×不要
×相続登記できない   司法書士が担当   相続登記の申請 ×不要

5-4■ これらを説明しないから具合が悪い。消費者被害といわれ、嘘が嘘を産む。

「登記は司法書士だと知っていれば、行政書士には頼まない」のが、一般的な消費者の行動です。

専門家士業は、一般市民と比較して、多くの情報を持っています。「依頼者を騙してはならない」というのは、専門家士業が当然に持っておくべき矜持です。依頼者の不知につけ込んで仕事を獲得するのは専門家士業として恥ずべき行為だからです。

 

「登記は司法書士に外注してるから問題なし」と言う行政書士もおりますが、その場合、当該行政書士が依頼者に対して、次の説明をして、依頼者が理解したうえで依頼することが大切です。

  1. 行政書士は登記の素人で、行政書士が相続登記に関与する必要性が全く無いこと
  2. 司法書士に直接頼めば、手間もコストも削減できること

行政書士会は「相続登記申請が義務化されるので、どうぞ行政書士をご利用ください」と広報していますが、これは専門家団体として問題のある姿勢だと言わざるを得ません。

5-5■ 行政書士が言う「相続登記より遺産分割協議書こそ大切」は、嘘。

「不動産の名義変更をしたい」との相談を受けた行政書士が「登記よりも重要なのは遺産分割協議書を残すことです」と行政書士としての書類作成依頼に誘導している事案が散見されます。

まず、行政書士がこのような相談に応じることは司法書士法違反です。結果的に登記するか否かに関係なく、登記を前提にした相談となるからです。

 

次に、行政書士は登記の素人ですから「登記」の意味を分かっていません。行政書士は、分かってないのに「登記は簡単」などと言うから、司法書士は、行政書士に一切関与して欲しくないのです。

「登記」をごく簡単に申し上げると、「早い者勝ち」ということです。遺産分割協議が成立したら素早く登記する必要があるのです。

なぜならば、相続人の中に借金を滞納している人がいたりすれば、債権者代位による相続登記【1】という方法で、法定相続分で登記されてしまい、遺産分割協議が成立していたとしても負けてしまいます。さらに、債権者代位で相続登記を入れられてしまいますと、権利証は発行されず、その後の売却等でも余計な手間と費用がかかり大変です。

【1】債権者代位による相続登記とは、債権者(金貸し)が債権(借金を回収する権利)を守るため、相続人がもっている相続登記を受ける権利を代わりに行使して、相続登記を行うことをいいます。

 

5-6■ 行政書士が言う「相続登記は簡単だから自分でできる」は、嘘。

「簡単な相続登記は、専門家に頼まなくても自分でできる。」それ自体は間違いではありません。

ところが、その前提として、簡単かどうかを誰が何を基準に判断するのでしょうか?

その相続登記が、簡単か困難かを判断できるのは、登記のプロである司法書士だけです。

登記の素人である行政書士が、簡単だと決めつけるのは、明らかに間違いです。

登記業務を行った行政書士が刑事事件で裁かれた裁判例でも、行政書士には登記は無理だ。登記に関する能力担保がなされていないからと認定されています(仙台高判平成9年5月23日高刑50巻2号109頁、WestlawJapan)。

 

また、簡単だというならば、「行政書士が作成した遺産分割協議書」が相続登記でそのまま使えれば良いのですが、登記で使えないため、作成し直してもらったことも一度や二度ではないです。

 

さらに、登記が簡単なら、行政書士試験のほかに、司法書士試験が存在している訳がありません。登記が簡単などという行政書士は、司法書士試験にも合格できるでしょうから、司法書士試験に合格して司法書士になってください。

 

不動産の相続登記は、相続手続きの中の一部であるのに、なぜ不動産登記だけを司法書士が独占しているのか?疑問に思っている他士業先生がいらっしゃるということなので、私なりに簡単に理由を説明します。

  • 不動産以外の財産:名義変更に必要な書類のフォーマットが用意されている。
  • 不動産:名義変更に必要な遺産分割協議書や登記申請書は用意されておらず、1件ずつゼロから作成する必要があり、難しい。

 

5-7■ 行政書士が言う「自分たちが相談のハブになる」は、嘘。

行政書士は「行政書士には相続手続きにおいて独占業務はないけれど、他の専門家士業を紹介するハブとしての役割を担う」という言い訳をします。その言い訳は、いわゆる民間資格者【1】が言う理由と同じです。行政書士が、依頼者を最初から「司法書士」へと誘導していれば生じなかった余分な費用を支払うことになります。

一方、司法書士もハブ機能を有していますが、司法書士には相続手続きにおける独占業務があり、自分たちが独占業務を行ったうえ、他士業につなぎますので、行政書士のハブ機能とは全く異なります。 

【1】民間資格者については、記事「相続に関与しようとする民間資格や民間団体にご注意ください。」をご参照ください。

 

5-8■ 行政書士から当初「登記は提携の司法書士を紹介する」と説明を受けていたが、結局「登記は簡単だから自分でできる」と言われ放置された。

「行政書士に『戸籍収集と遺産分割協議書作成』を依頼したら、思いのほか高くて、相続登記を司法書士に依頼できず、自分で申請したけれど、できなかったので、お願いしたい。」というご相談も、私たち司法書士のもとに多く寄せられます。

 

5-9■ 行政書士が言う「登記は行政書士のサポートで安心」は違法

行政書士のホームページの中には「行政書士は相続登記に関する専門知識と経験を持ち・・・」などといって「相続登記」を誘致しているものも見受けられます【1】が、行政書士は登記に関する専門的な知識を有していません。

行政書士は、登記に関する相談に乗ること自体が違法です(司法書士法78条1項違反)。

さらに、登記の添付書類だけであっても違法です(最判平成12年2月8日刑集54-2-1、同調査官解説)し、無料であっても違法です(最判昭和39年12月11日裁判集刑153-647)。

詳しくは記事「登記(会社設立や不動産名義変更)を税理士・行政書士に依頼してはいけない理由」を参照ください。

【1】非司法書士によるこのような広告表現は、司法書士法に反し、違法なものですので、各県の司法書士会に通告し、警告書の発送などを行うよう依頼しています。

6■ 利益相反が禁止されていない行政書士は、遺産分割協議をかき回す可能性があるから相応しくない。


弁護士には、依頼者と利益が相反する相手方の相談を受けてはいけないという規定(利益相反禁止規定)があります(弁護士法25条、弁護士職務基本規程27条、28条、)。

司法書士も、当然、利益相反が禁止されています(司法書士法22条2項3項、司法書士行為規範31条)。

 

ところが、行政書士の場合は、利益相反行為が禁止されていません。

行政書士は、この点を逆手にとって「相続人間で意見の対立がある場合、行政書士は中立的な立場から意見を取りまとめる役割を果たします。相続人同士の話し合いが難航することは珍しくなく、感情が絡むと問題がさらに複雑になることもあります。その際に行政書士が介入することで、円滑なコミュニケーションを促し、合意形成をサポートします。専門家による第三者の視点が加わることで、相続人間の理解が得やすくなります。」などと宣伝しています(スターズ行政書士法人「行政書士に遺産分割協議書作成を依頼する理由」https://aegis-office.com/column/0ff68840-2eac-4ee2-99ae-a13ec13ec836/最終アクセス250813)。

 

本当にそんなことが可能でしょうか。私たち司法書士や、弁護士は中立の立場で遺産分割協議に参加することなどあり得ません。

例えば、相続人が「自分は親父の事業のために無償で○年間働いた。先生、それは評価されないのか」と質問されれば寄与分の説明をせざるを得ません。また、他の相続人が「そうかもしれないけれど、兄貴だけ大学院行かせてもらったやん。先生、それはどうなんですか」と質問されれば特別受益の説明をせざるを得ません。

遺産分割協議は、相続人全員が法律上の権利をすべて主張すると、紛糾してしまいます。

したがって、専門家が中立の立場で遺産分割協議に参加すると、遺産分割協議を紛糾させる可能性が高くなるのです。

(なお、意見の対立がある場合に、相続人一人の代理人として遺産分割協議に参加できるのは、弁護士だけです。相続人一人の代理人として参加した弁護士は、その相続人の利益を考えてベストを尽くすことができます。)

 

皆様も、まとまっていない遺産分割協議の取りまとめを、決して行政書士に依頼なさらぬよう、ご注意ください。

7■ 行政書士は、業際違反が多いから、最初の相談先として相応しくない。


兵庫県司法書士会は、相続登記に関与している行政書士がいるとの情報提供を受け、当該行政書士について刑事告発を行いました。結果、当該行政書士は起訴され、有罪が確定しました。詳細は、2025年11月14日付兵庫県司法書士会ホームページ『相続登記を行っていた行政書士が起訴され有罪判決を受けたことについての会長声明』最終アクセス251125をご参照ください。

  • ほかに司法書士との間では、会社や法人の設立でも揉めています。会社や法人の設立登記は、登記が効力発生要件(会社や法人は登記することによって誕生します。)であるのに、定款作成は行政書士もできると豪語なさいます。定款だけ作っても仕方ありませんし、法務局に提出する書類は、添付書類も含めて司法書士の独占業務であるという最高裁判決(平成12年2月8日最高裁第三小法廷判決・平成9年(あ)613号及びその調査官解説)や所轄庁の通達(昭和37年9月29日自治丁行第67号・日本行政書士会連合会宛・行政課長回答)などもあります。登記を行った行政書士が有罪となった事例は他にも多数あります。例えば、
  • 税理士との間では、会計記帳で揉めています。会計記帳は誰がやっても良い仕事ではあるのですが、何故、会計の専門家である税理士がいるのに、行政書士がやろうとするのか謎です。
  • 社会保険労務士との間では、就業規則の作成で揉めています。10人以上の事業所は就業規則を労基署に提出する義務があります。ところが、行政書士は、10人未満の場合には労基署に提出する文書ではないので、行政書士の分野だと強弁しているのです。
    • 令和7年3月14日鹿児島県知事は、行政書士が就業規則の作成を行ったのは違法であるとして、当該行政書士を3か月間の業務停止処分を行いました(日本行政書士連合会『綱紀事案の公表』最終アクセス251130)。
  • 弁護士との間では、示談書の作成権限等について揉めています。行政書士は、示談書の作成について、紛争性が低い、高いで分類する謎の理論を持ち出し、紛争性が低いものは行政書士も担当できるとしています。
    • 平成17年12月26日、弁護士法72条違反・司法書士法3条8項違反疑義等のため滋賀県行政書士会会長による会則84条の2による訓告。
    • 平成18年6月26日、弁護士法72条違反のため岡山県知事による業務禁止。
  • 弁理士法75条に抵触する行為を実施したため、平成19年6月29日、京都府行政書士会会長による訓告。

このように行政書士は、他の国家資格との間で、多くの業際紛争を抱えています。これらのうち裁判で決着がついているものもありますが、行政書士は認めようとしません。

 

すなわち、行政書士は、行政書士資格ではやってはいけない他士業の仕事までやってしまうことも多い(業際違反をすることも多い)から、最初の相談先として相応しくありません。行政書士がやってはいけないのは、能力が担保されていないから(行政書士では能力不足だから)です。

8■ 行政書士はバックマージンを許容する業界だから、最初の相談先として相応しくない。


バックマージン(紹介料)とは

  • 「バックマージン」とは、顧客を紹介する見返りに現金などを授受する行為または授受される現金のことをいいます。広告宣伝費などの名目であっても同じです。
  • 行政書士業界の一部では、葬儀社や士業紹介サイト等へのバックマージンの支払いが横行し、依頼者に不透明かつ不公平な費用構造を生んでいます。

 

葬儀会社や士業紹介サイトによる行政書士紹介の問題点

「葬儀会社」は、他のどんな職業よりも多く相続の場面に立ち会うので、当然、分かっています。「相続手続きに、行政書士は不要である」という事実を。

 

「士業紹介サイト(運営会社)」も、士業の仕事を熟知したうえ紹介するのでしょうから、分かっています【1】。「相続手続きに、行政書士は不要である」という事実を。

 

それを分かったうえで、あえて、司法書士ではなく、行政書士を紹介しているのであれば、バックマージン(紹介料)目当ての可能性があります【2】。

 

【1】すべての葬儀会社や士業紹介会社が、バックマージン目当てで、行政書士に紹介しているとは断言できません。また、葬儀社から紹介を受けたすべての行政書士が、バックマージンを支払っているとも断言しません。

士業を紹介するだけで、高額な紹介料を受け取るというビジネスは、濡れ手に粟ですので、このビジネスで上場した企業も存在しています。ご興味がおありの方は「相続専門家紹介」などで検索してみてください。記事「相続に関与しようとする民間資格や民間団体にご注意ください。」もご参照ください。

【2】本来、相続手続きで必要な司法書士(紛争化した場合は、必要な弁護士)は、バックマージンの授受を禁止されています。したがって、葬儀会社や士業紹介会社は、司法書士や弁護士に案件を紹介してもバックマージンを貰えないからです。 

 

バックマージンが依頼者の皆様へ与える影響

  • SNSでは、行政書士の実名アカウントが、「報酬の20〜25%を紹介料として支払う」と、公然と語っています。
  • 「行政書士に案件を紹介した方が、紹介料を受け取れない場合には、報酬をその分値引きする」と語る行政書士もいます。

バックマージンの有無によって、依頼者が支払う額が変わることになり、不公平が生じています。 

 

バックマージン肯定派行政書士の意見

SNSをサッと見ただけでも、バックマージンを許容する行政書士は次のような意見を述べています。

  • 相続遺言業務は確かに行政書士だけで完結することは少ないかもしれないが、これほど・・・キャッシュポイントが多い業務もなかなか無い・・・
  • 行政書士の相続業務は儲かる♪保険屋・葬儀屋・不動産屋からの謝礼金(紹介料)が大変な額になる♪
  • 士業もビジネス。紹介料の授受は「三方よし」の考えに基づき、有益な人脈を築く上で重要。
  • 留学生や人材関係の業界では紹介料が当たり前であり、ビジネスとしては当然である。
  • バックマージンの授受を否定するなんて、どれだけ有益な人脈築けない方々なんでしょ。

バックマージンを否定する他の専門家からの批判(他士業ながら、専門家への信頼を守ろうとする司法書士、弁護士)

  • 専門家としての職業倫理が欠如している。
  • 専門家への信頼を損なう行為。
  • 専門家は、カネと倫理が相反したとき、倫理を取らないといけない。
  • 独占業務を与えられている士業は、依頼者に対し後ろめたい利益の上げ方をしてはならない。
  • 依頼者に開示できない「紹介料」は、適切な業務対価ではなく、信頼を利用した搾取に見える。
  • 依頼者に「紹介料」の仕組みを開示しても、同じような信頼が得られるのか?
  • 弁護士と司法書士には、紹介料の授受を規制する倫理規定がある。行政書士に明文規定がないとしても、会則以前の職業倫理に欠ける。
  • あんなに堂々と紹介料の授受を肯定されると、行政書士全体をそういう目で見てしまう。

本当に行政書士は、バックマージンを禁止されていないのか?!

令和6年4月1日「行政書士職務基本規則」が施行された模様です。

行政書士職務基本規則 第15条(不当誘致行為の禁止)
 
  1. (略)
  2. (略)
  3. 行政書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、その紹介の対価を依頼者の報酬に上乗せしたり、職務内容と比較して法外な金額を請求したりしてはならない。
  4. 行政書士は、依頼者の紹介をしたことについて、その対価を要求してはならない。

行政書士によるバックマージンの要求は全面禁止されたようです(4項。要求していないのに、勝手に支払ってきたのを受け取るのは問題なしというように読めます。)が、バックマージンの支払いは「上乗せ」しなければOKになった模様です(3項)。

 

司法書士の同種規定は「司法書士行為規範」にあります。同規範は「司法書士倫理」を改正する形で、令和5年4月1日から施行されています。司法書士はバックマージンの授受を全面的に禁止されていることが分かります。

なお、バックマージンの授受を禁止する規定は、改正前の「司法書士倫理」の時代からありました。

司法書士行為規範 第12条(不当誘致等)
 
  1. (略)
  2. 司法書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を支払ってはならない。
  3. 司法書士は、依頼者の紹介をしたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を受け取ってはならない。

 

ついでに、弁護士の規定も見ますと、やはり弁護士も授受を全面的に禁止されていますね。

弁護士職務基本規程 第13条(依頼者紹介の対価)
 
  1. 弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。
  2. 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。

行政書士の倫理が、司法書士や弁護士のそれに追いつくことを、市民のために祈念しています。

まとめ

以上より、①一部の行政書士が堂々とバックマージンを肯定する風潮があること、②行政書士団体も「要求しなければOK」「上乗せしなければOK」などという中途半端な倫理感しかないことを、お分かりいただけたと思います。

結論は、当然「相続の最初の相談先として行政書士は適切ではない」となります。 

9■ 銀行なども、行政書士を相続の専門家として認めないから、司法書士が良い。


令和7年5月、筆者において「銀行 専門家紹介」と検索したところ、次のサイトが上位に上がってきました。三菱UFJ・三井住友・りそな銀行等の相続専門家紹介では、行政書士は対象外とされています。

三菱UFJ銀行「相続ガイド」

三菱UFJ銀行は、相続に関する情報発信と、専門家の紹介を目的として「そうぞくガイド」サービスを提供しています。

そして相続に関する専門家として弁護士、税理士、司法書士を探すことができるようになっています。一方で、行政書士は掲載することができません。

また同銀行の「相続の相談は誰にしたらいい?専門家ごとの違いを解説」でも弁護士、税理士、司法書士は登場しますが、行政書士は一文字もでてきません。

 

三井住友銀行「遺産整理」

三井住友銀行「遺産整理」のサイトでも「遺産整理業務の流れ」の中で、司法書士(相続人の確定と相続登記のために)や、税理士(所得税の準確定申告、相続税の申告のために)を紹介するとなっています。一方、行政書士は出てきません。

 

りそな銀行「遺産整理業務(相続手続代行サービス)」

りそな銀行の「遺産整理業務(相続手続代行サービス)」においても、「ご希望に応じて、司法書士や税理士などの専門家をご紹介いたします。」となっており、行政書士は一文字もでてきません。

 

朝日新聞「相続会議」

朝日新聞も、相続に関する情報発信と、専門家の紹介を目的として「相続会議」というサイトを運営しており、弁護士、税理士、司法書士を検索できるようになっています。

行政書士は出てきません。

まとめ

銀行も新聞も「行政書士を相続の専門家と位置づけていない」ことをお分かりいただけると思います。相続を行政書士に相談してはいけません。

10■ 家族にも「相続は、司法書士の方が良い」と言うから、司法書士が良い。


家族が何らかのサービスを受ける場合、良いサービスを受けて欲しいと思いますよね。

良く分かっている業界のことであれば、なおさらです。

私なら、家族には「相続は、行政書士に相談してはいけない。司法書士に相談した方が良い」と言います。仮に、私が司法書士でなくても、そうです。

最初から司法書士に依頼した方が一貫性もあり、法的にも安全であるというのは専門家士業内でも共通認識となっています。

 

行政書士の皆さんは、家族や親族にも「相続は、行政書士に相談すべき」と言うのでしょうか?

それとも、家族や親族だけには「相続は司法書士、税金かかりそうなら税理士、揉めたら弁護士」と言うのでしょうか?

最後に【行政書士(会)の皆様へお願い】


行政書士が「相続」と銘打って広告するから消費者被害を生む。

たとえば「相続」に関する行政書士事務所のチラシに

・相続登記申請が義務化されました

・相続の相談は行政書士へ

と同時に、目立つように表示していたら、一般消費者は、行政書士が登記もできるように誤解してしまいます。これでは「消防署の方から来ました」商法【1】と同じです。広告は、誤認を生じさせない内容であることが大切です。専門家士業であれば、なおさらです。

 

令和7年6月「不動産専門行政書士」と銘打って、X(旧・Twitter。SNSの一種)に相続登記に関する嘘を投稿した行政書士が、司法書士アカウントによって、一斉に間違いを指摘され「AIが作った文章です。」と言い訳をした後、投稿を削除したことがありました。

このように行政書士が、相続専門などと銘打って広告すると、消費者被害を生んでしまいます。

 

消費者被害が生じているので、司法書士会も弁護士会も、懸命に行政書士に対する取り締まりを行っていますが、あまりに件数が多すぎて全件に対処しきれていません。私は、兵庫県司法書士会の非司法書士排除委員会の委員ですが「本人申請を隠れ蓑に登記をしている行政書士がいる」との情報提供が非常に多いです。

 

最判平成12年2月8日(刑集54巻2号1頁)は、行政書士が登記申請を行ったとして、有罪となった事件ですが、その調査官解説において「初めから登記原因証書として作成される場合は、登記申請の添付書類として法務局又は地方法務局に提出する書類に該当するから、司法書士が作成すべきものであって、行政書士が作成することはできない」と解説されています。

それにも関わらず、行政書士は「不動産がある方の遺産分割協議書であっても、不動産の名義変更に使われるとは限らないから行政書士が作成して良い」などと詭弁を重ねます。

ところが、法改正により「遺産分割協議が成立した場合には、3年以内に相続登記を申請することが義務となりました(不動産登記法76条の2Ⅰ)」ので、行政書士による上記詭弁は成り立たなくなりました。

 

さらに、行政書士が登記用の遺産分割協議書を作成して、司法書士に依頼せずに本人申請をした場合において、書類に間違いがあり依頼者が損害を受けたときでも、行政書士の業務の範囲外ですので、行政書士の損害賠償責任保険が使えないという問題もあります。

 

行政書士が「適切に司法書士や弁護士に紹介している」と言うのも、おかしい話です。

途中までしかできないなら、最初から「相続」と銘打って広告集客しなければ良いのです。

行政書士が「自分たちが相続相談のハブになる」と主張すること自体が誤誘導なのです。 


【1】「消防署の方から来ました」商法とは、昭和50、60年代に、悪質訪問販売業者が、消火器の訪問販売を行う際に、さも消防署職員が消火器を適正価格で売っていると思わせるような「消防署の方から来ました」という第一声で、消火器を売りまくった詐欺的商法のことです。

 

行政書士(会)が「不動産がある相続は司法書士へ」とキッチリ説明しないから、消費者被害といわれる。

某県の行政書士会の会長が、行政書士会の公式YouTubeにおいて「相続登記の義務化について触れ、行政書士は遺産分割協議書作成のお手伝いができます。ぜひ行政書士をご利用ください」という動画を公開しました(すでに削除された模様です。)。この動画では、司法書士という単語は一度も登場しません。行政書士は、登記相談、登記申請書作成が一切できないことにも触れません。

行政書士会自身がこういう「消防署の方から来ました」商法をするのは、いい加減止めるべきです。

この動画を見た一般視聴者は「相続登記が義務化されたのか、行政書士に相談したら良いのか」と誤解するでしょう。

この動画を見た行政書士の中には、行政書士も相続登記できるんだと誤認する者もいるでしょう。また、同様の「消防署の方から来ました」商法をしようとする行政書士も増えるでしょう。

 

皆さんは、どう思いますか?

途中までしかできないなら、最初から関わってほしくないと思いませんか?

 

行政書士(会)の皆様へお願い

行政書士本職であれば「行政書士が一切関わることなく、相続手続きが完遂できる」ことをご理解されていると思います。行政書士が関わることで、依頼者の負担する費用が高くなったり、時間が余分にかかることもご理解されている筈です。

一般消費者の不知を奇貨として、他士業の仕事にいっちょ噛みしようとすることは、士業としての矜持に悖る行為だと思います。

 

行政書士(会)の皆様におかれましては、「相続」を広告に利用なさらないようにお願いいたします。