契約書の中に、次のような条項が入っていることがあります。
このように表明し、保証する条項のことを「表明保証条項」といいます。
「表明保証条項」は、M&Aの契約書(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書)に定めることが多い条項です。
この記事では「表明保証」について解説しています。
| もくじ | |
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表明保証とは、契約当事者の一方が他方の当事者に対し、契約締結時や代金支払時(クロージング時)などの特定の時点において、契約の対象や当事者自身に関する一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証する条項です。
表明保証条項には、以下のような機能があります。
表明保証条項を契約書に入れる場合、以下の点に注意が必要です。
表明保証に違反があった場合、それ自体から直接的に効果が生じるわけではなく、通常は契約書内の他の条項と組み合わせることで以下のような効果が発生します。
表明保証する項目は、多岐に渡ることが通常で、この項目だけで契約書が分厚くなってしまいます。そこで、別紙にまとめて記載することで、見やすくするのが通常です。
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売主を甲、買主を乙としたとき、次のようになります。
中小企業庁が、公開している「ひな形」は次のとおりです。
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第7条 (甲の表明及び保証)
甲は、乙に対し、本契約締結日及びクロージング日において、別紙1に記載の各事項が真実かつ正確であることを表明し保証する。
第8条 (乙の表明及び保証) 乙は、甲に対し、本契約締結日及びクロージング日において、別紙2に記載の各事項が真実かつ正確であることを表明し保証する。 |
このひな形では、売主が表明保証違反した場合において、買主にも故意(知っていること)・重過失(知っていると同視できるほどの重大な不注意)があったときに、買主が売主に対して、表明保証違反を理由として、損害の賠償を請求することが可能か疑義が生じかねません。
表明保証の相手方の主観が表明保証の効力に与える影響については議論があるためです。
裁判例では、表明保証の相手方が違反について悪意である場合には表明保証責任を免れ、重過失がある場合もこの責任を免れる余地があるとしたものがあります(東京地判平成18年1月17日判時1920号136頁)。
したがって、売主の表明保証違反があった場合において、買主に故意・重過失があったときでも、買主が売主の責任を追及できるよう、買主の主観が表明保証の効力に影響を及ぼさない旨を定めます。
第7条 (甲の表明及び保証)
第8条 (乙の表明及び保証)
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こちらも中小企業庁のひな形をご紹介します。
売主による保証条項が、買主のそれと比べて、多いことがわかります。
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(別紙1) 甲が表明及び保証する事項
(1)甲に関する表明及び保証
(2)対象会社に関する表明及び保証
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(別紙2) 乙が表明及び保証する事項
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表明保証は、多岐に渡りますが、その趣旨を一つずつ確認して、今回必要な条項か否かを判断していく必要があります。
| 【1】 | 対象会社との取引の不存在 |
| クロージング日において、甲と対象会社の間には、甲が対象会社の役員として提供する役務及びそれに対する報酬等の支払を除き、役務、便益の提供その他の取引(契約書の有無を問わない。)は存在しないこと。ただし、本契約において記載がある事項については、この限りではない。 | |
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☛下記2つの意味で申告を受けておく必要があります。
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| 【2】 | 競業避止義務の不存在 |
| 対象会社は、取引先等との契約において、競業避止義務等の義務のうち、その事業の遂行に重大な影響を与える制限を内容とする義務を負っていないこと。 | |
| ☛競業避止義務を負う契約を引き継いだ場合、「買主の既存事業」も影響を受けることがあります。 |
M&Aのスキーム(株式譲渡、事業譲渡)によって、表明保証条項に入れるべき項目は異なります。
多くの項目は共通していますが、取引の対象が異なるため、それに起因する重要な相違点があります。
株式譲渡契約と事業譲渡契約における表明保証条項は、多くの場合で規定される項目が共通します。個別具体的な規定内容については重複する部分が多数あります。
売主に関する事項、情報の開示に関する事項などは両スキームで同じです。
最も大きな違いは、表明保証の「対象」です(後掲『会社法実務解説』398頁)。
(1) 株式譲渡
株式譲渡では、売買の目的物が「対象会社の株式」であるため、表明保証は対象会社全体に及びます (後掲『新民法対応 契約審査手続マニュアル』387頁)。具体的には、以下の3つに大別されます。
株式譲渡では、会社の資産や負債をそのまま引き継ぐため、偶発債務などのリスクを分離できません。そのため、表明保証条項によって、売主に対して偶発債務の不存在などを保証させ、違反があった場合に金銭的な補償を求めることでリスクヘッジを図ります(後掲『M&A法大系 第2版』58頁)。
(2) 事業譲渡
事業譲渡では、表明保証の対象は「承継対象となる事業及びその財産等」となります(後掲『会社法実務解説』398頁)。具体的には、「譲渡対象となる事業・資産・債務・契約・従業員等に関する事項」が中心です(後掲『契約書作成の実務と書式』284頁)。
事業譲渡の大きな特徴は、資産・負債を取捨選択できる点です。買主は取得したい資産・負債のみを承継し、偶発債務などの望まない負債を売主に残すことが可能です。そのため、株式譲渡ほど偶発債務の不存在に関する表明保証の重要性は高くなく、むしろ承継対象として特定された資産や負債に関する表明保証が重要となります(後掲『M&A法大系 第2版』58頁)。
| 株式譲渡 | 事業譲渡/会社分割 | |
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◎ | △重要でない |
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△重要でない | ◎重要 |
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○ | ○ |
【1】例えば、①株式そのもの、②対象会社の発行済株式総数、③新株予約権の有無といった事項である。
【2】例えば、次の事項について、売り手側の表明保証を検討すべきです。
(酒井 竜児,岩崎 友彦,大久保 圭,宰田 高志,杉野 由和,滝川 佳代,田子 弘史,服部 薫『会社分割ハンドブック〔第3版〕』(商事法務、2021)212頁参照
【3】事業譲渡契約における売主の表明保証は、株式譲渡契約における売主自身に関する事項(法人の存続・権限、契約締結の授権行為、強制執行可能性、法令等との抵触の不存在、破産申立原因等の不存在など)に加え、株式譲渡契約の対象会社に関する事項の多くが、譲渡対象事業に関する事項として含まれます。
事業譲渡契約書の表明保証条項が、株式譲渡契約書のそれと大差ないことについては、下記参照。
この記事を執筆するために下記文献等を参考にしました。
企業・事業者向けサービス
トラブル解決サービス(簡裁訴訟代理、裁判書類作成)
